サンティ・クワットロ・コロナ―ティ教会はチェリオの丘に連なる坂道の頂に、まるで中世の騎士の城のように聳えている。地理的にはサン・ジョバンニ・イン・ラテラーノ大聖堂とコロッセオを北西から南東に結ぶ同名の通りの登り切った坂道に面して建っている。
窓の少ない高い外壁はいかにも古い僧院と云う雰囲気が漂っていて、トンネルのような細長いアーチの出入り口を潜って行くと、さらに雰囲気は聖なるものに一変する。
アーチ部の仄暗いトンネルを抜けると中庭のような小広場に達する。三連のアーチがある回廊を潜って見上げると壁の上部には微かにフレスコ画が残っている。
魅力的な回廊へは聖堂の横の扉を開けて通路を進むと、暗闇に慣らされた目に劇的に光の空間が出現する。ここで劇的であると云う意味合いは視覚的な効果もあるけれども、中庭に微かに響く水滴の音である。遠い歴史の彼方から届いてくるようで、か細い、呟きにもにた清明観は喩えようもない。
やはりここでも回廊に付属した可愛らしい独立したS・バルバラと云う名の礼拝堂が備わってある。内部は祈りを奉げるには程よい広さで、半ば破壊された、廃墟に向かいつつあるビザンティン風の聖母子像の色褪せたフレスコ画が残されている。
再び回廊に戻って中庭に立つとローマの空が眩しい。
二本一組の柱列の連なりも美しいが、回廊部の柱の上部、日本家屋で云えば長押に当たる部分のモザイクが褪せた色合いとともにアクセントとして素敵である。