前回の続きです…
家の前まで来た時
長男が出て来てくれて
招き入れてくれました
自宅のエレベーターで
リビングのある3階まで上がるほんの数十秒が
5分も10分にもかかるような気がします
やがてエレベーターが3階のリビング前に着き
長男がリビングのドアを開けると
定位置の椅子から義母が立ち上がり
"よく来たわね"
と、
7年前と変わらぬ低い声で
私に声をかけてくれました
今年90歳になる義母
私は涙が溢れ出し声に詰まってしまい
うまく話せません
"あらあら、感極まっちゃったのね"
"そんなとこに突っ立ってないで
上着を脱いでここにお座んなさいよ"
と
私を部屋へ招き入れてくれました
あの頃と変わらぬ日差しの入り込む
広く明るいリビング
壁の一角に貼られている数えきれない子ども達の小さかった頃の写真
その中には
もちろん若かった私もいて
家族皆んなで撮った写真もそのままで、、、
変わらない風景
1ピースだけ見つからなくなってしまったパズルのように
私だけが
この家から抜けたんだ、、、
7年の月日が
この家では変わらず営まわれていて
私だけが
その7年間抜け落ちてたんだ
それは
これからも変わらず
私を除いて続いていくのだ
ドロップアウトしてしまった罪悪感が胸にのしかかる
義母が口を開く
今の自分の身体の状態や
子ども達のこと
子ども達が代わる代わる来てくれて
身の回りの世話をしてくれていること
"すごく感謝してるのよ。"
と静かに話してくれた
いつの間にか
あの頃に戻ったような感覚に陥る
義母と私は仲が良かった
本当に血の繋がった親子のようで
仕事を一緒にするのも息が合い
お互いなくてはならない存在だった
元主人よりもこの義母と会う為に
結婚したんじゃないか?
というくらいだった
"材料あるなら何か作り置きしてこうか?"
と言うと
"大丈夫よ。明日ヘルパーさんが来るし今日は大丈夫"
というから
無理に義母たちの生活に立ち入るのも良くないと思い
手は出さなかった
"のぶちゃん、これから茨城の実家へ帰るんでしょう?そろそろ行った方がいいんじゃない?"
時計を見ると
元主人の帰宅時間が近いようだったので
名残惜しかったけど
席を立つ
"またこっちに来る機会があったらお寄りなさいよ"
と義母
"うん。そうします。
おかあさんに会えて、念願叶ってよかった。
ありがとう。元気でね"
お顔は出せないけれど
私と義母はすごく似ている
ゆっくりと
エレベーターの前まで送ってくれて
見えなくなるまで
義母は手を振ってくれた
良かった…
一目会いたかった義母に会えて良かった…
喜びを噛み締めながら
駅までの道のり
長男と並んで歩く
義母との間に入ってくれた長男に
"ありがとう"
と
一言いうと
"いや、オレ、なんもしてねえけど"
て。
優しいな
優しい人間に育ったな
ありがとうね
ママはあなたに頭が上がらないよ