西田は、GEのジャック・ウェルチを尊敬し、その著作をたんねんに読んでいました。ウェルチだけでなく、これはと思った本に目を通し、社員に読書を勧めていました。単なるビジネスマンというより、求道者であるかのようでした。情熱も人一倍あったでしょう。

しかし、そんな彼も、本社でパソコン担当の役員となり、そのパソコン事業がおかしくなり、次の社長と言われていたのに、その時は社長になれなかったことから、おかしくなります。そして、翌年度、後に問題となるパソコン事業の粉飾決算が行われます。彼はこれについては、自分はやってないと否定していますが、結果として、この粉飾決算のおかげで、社長になれます。

社長になった西田は、西室元社長の選択と集中の方針を実践し、原発事業にのめり込み、WHの買収に腐心しますが、ライバルの三菱重工に値をつり上げられ、多大な出費を強いられます。そして、東日本大地震が起こり、世界の原発事業は停滞し、最後は自ら選んだ後継社長との確執、粉飾決算の露見、会長として、副会長、社長とともに引責辞任します。

若い頃のはつらつとした純粋な情熱が、不測の事態があったとはいえ、自分の欲望、野心により、どろどろと鈍く光るものに変質してしまう様を描いた著作だと思いました。