「どうして、ノルマンディー公がフランス人でないのですか」
金山が尋ねる。
「ノルマンディーでしょ。もとはノルマン、今のデンマークあたりから来たバイキングよ」
と美代子。
「な、な、なんと」
大口が、大仰な声をあげる。
「そればかりか、アングロサクソンの時代に、デンマークは、100年イギリスを支配してたのよ」
「でも、公って、公爵でしょ。フランスの公爵なんでしょう」
と、酒井。
「そう。デンマークからやって来て、そこに国を作った。作られた国はどうする」
美代子が言う。
「戦争でしょ」
と、大口。
「バイキングが強かったら」
「・・・」
「婚姻関係で、味方にする」
と金山。
「当たり。でもね、後々それが問題になるのよね。百年戦争って知ってる?」
と美代子。
「僕ら日本史なんで」
大口が小声で語る。
「じゃあ、ジャンヌ・ダルクは?さすがに知っているわよね」
「知ってます」
と3人。
「あの戦争は、フランス国王になる権利が私にもあると、ノルマンディー公の子孫であるイギリス国王が起こしたのよ」
「なんという王様ですか」
金山が尋ねる。
「そんな細かいことはいいの。だから、このように、イギリスは決してアングロサクソンじゃないのよ」
美代子は、戦争を起こした国王の名前を忘れるか、覚えてないな、と、私はほくそ笑んだ。
「何が可笑しいのよ」
美代子が私をにらみつけてくる。 
「いい、イギリス人ってアングロサクソンだけじゃないのよ」
「はい」と3人。
「その後、国王は、オランダやドイツからもやって来たのよ」
美代子の講義は続く。