「それじゃあ聞くけど、イギリス人は何民族ですか」
美代子が問う。
「イギリス民族でしょ」
と大口。
「何言ってんだ。イギリス民族なんてないの。アングロ・サクソンでしょ」
酒井が言う。
「でも、ケルト民族もいるぞ」
と、金山。
「ふふふ、いいところに気がついたわね。じゃあ、イギリスの支配階級、昔のね、たとえば王室は何民族?」
「あーっ、それこそがアングロ・サクソンだ」
酒井が叫んだ。
「酒井君、アングロ・サクソンにこだわるわねえ」
「だって、イギリスと言えばアングロ・サクソンでしょ。みんな言ってますよ」
「みんなって誰?」
「えっ、いや、まあ」
「みんな言ってるとかいう言葉でごまかさない」
「はぁ」
「じゃあ、かいつまんでいうわね。イギリスに最初に来た民族は、ケルト民族の支族のピクト族と書いてある本もあるわ。その次にケルト民族本体よ。それからローマ帝国に占領されるの。ローマ帝国の傭兵として使われていたのが、アングロ族であり、サクソン族なの。2つ合わせてアングロ・サクソンというわけよ」
「やっぱりアングロ・サクソンでしょ」
と酒井。

「ちがうわ」
美代子がきっぱり言った。