「そ、それでどうしたんだい」
しようがないので、私が言った。実は、会社勤めしていた頃、私も酔った勢いで、新婚の若い社員に、同じようなことを言ったことがある。それが、回り回って、美代子に伝わったのだろうか。

「何うわずった声だしてんの。あなたのこと言ってる訳じゃないのに」

これは、俺が言ったことを知ってるぞという意味か。いずれにしても、しらばっくれるしかない。

「うわずってなんかいないよ。で、奥さんはどうしたんだい」
「家に帰ってきた県議をさんざんとっちめてやったと言ってたわ。県議は、ごめん、ごめん、冗談だよ、と一晩中謝っていたそうよ」
「はははっ、そうだろうな」
私は強がってみた。

「奥さんは誰が1番日本の男らしいと思いますか」
誰かが言った。見ると金山だった。