「お前、もともと力があるとは知ってはいたが、す、凄いなあ」
私が言うのを聞いて、3人は
「奥さん、凄いです」
と、それぞれテノール、バリトン、バスで声を上げた。こいつら、合唱でもやっていたのか。

私は振り返って「申し遅れたが、私の妻の」
と紹介しょうとした。
3人は
「妻の美代子さんでしゅ」
と、またコーラスした。

「えっ、名前まで何で知ってんの」
「だって、さっき名前言ったじゃないですか」
と3人。

すると美代子が、野太く、大きな声を出した。
「なにをごちゃごちゃ言ってる」
その声に3人は、
「あっ、いや」
と小さい声で返事をして、がたがたと震えだした。

私も、これほどまでの美代子を見るのは初めてなので、呆然てしてしまった。