あれから数日後。
心拍確認をしてから初めて彼に会った。
彼は、手術の日程を進めようとしたけれど
どうしても聞いてほしかった私は彼に
心拍確認ができたことや赤ちゃんの大きさなどを
泣きそうになりながら伝える。
正直、心拍確認が出来て迷ってしまったこと。
同業の一部信頼出来る友人らが産むならお金を出すよ!と言ってくれていること…その全てを伝えると彼は今までで1番困った顔をした。
当然だよね。この前一緒に中絶しようと決めたのに今になって私にどうしようと言われても彼は困るに決まっていた。
産むならどうにかという考えはもちろん彼にもあったけれど、その選択肢を選ばなかった理由は私も知っているというのに、今更。
でも、それまでずっとつわりで具合が
悪いながらもひとりで働いて通院していた私は
この目で心臓が動いているのを見てしまった私は
子供がお腹にいるという自覚を持った私は
一人では到底抱えることができなかった。
だから、それまで見せていなかったエコーの写真も2枚彼に見せた。
彼も実感した表情をしていた。
苦しそうな顔で「今は精一杯なこと伝えたよね?玲奈は、産みたいの?…俺は正直今の状態で子供を育てていける自信はない。」と私に告げる。
そんな表情が見たかったわけじゃなかったのに。
こんなふうにしたら彼が困ることも分かっていたのに。
私は、泣くのをこらえるのに必死だった。
わかっていた。
この子を実際に抱き抱えることはできないこと。
彼だけが悪いんじゃない。
ごめんなさいと一言いって俯く私。
黙り込む私を見ながら彼は静かに頭を撫でて、
運転を始めた。
家に着くまでの間、ずっと手を繋いでくれていた。