それから、数日後。

私は地元の産婦人科(B病院)にいた。

ここに来た理由は、今後体調が仮に悪くなったとしても家から病院に通院がしやすいこと。
そして、ここでは中絶手術ができること。
…それがこの病院を選んだ理由だった。

以前、病院で撮ったエコーを渡して何週と何日目なのかと体の症状について伝える。

産むか、産まないかを問うアンケートは迷った末に答えることが出来ず白紙で出した。


その後、名前を呼ばれていつものあの椅子に座る。なんとなく、エコーを見るのが怖かった。


「うーん、7週と5日目ですね。
11mmで心拍も確認出来ていますので、特に身体に以上は見られず元気に育っていますね。」


そう言われて、見たエコーは一生忘れないと思う。私のお腹にいる小さな白い天使は、元気に育っていた。生きていた。心臓が一生懸命に動いているのがわかって見た瞬間に涙が出た。


ああ、産むことができるお母さんはこれを見た時どんなに嬉しいんだろう。なのに私は…。


この時、初めて私は赤ちゃんがお腹にいるということを自覚した。

その後、看護師さんに中絶手術を受けるか問われて私は思わず「迷っています」と答えてしまった。

看護師さんは、

「よく、彼氏さんと話し合って決めておいでね。ただ、時間が無いのも事実。中絶をするのであれば、お母さんの体にとって早いにこしたことはないの。そう考えると、もう時間はないけど…とりあえず、産む場合とおろす場合両方説明しておきますね。」

と言って、私に両方の説明をしてくれた。
その最中もさっき見たあの映像が頭から離れない。


一通り、説明が終わった後
質問ある?と聞いてくださった看護師さんに私は


「中絶をする女性には、彼氏さんとか旦那さんはついてこられるんですか?」と聞いた。


私は彼についてきてほしかったから、彼に話す上でついてこないといけないと思わせるために必要だと思ったから…

でも、看護師さんは曇った表情をして首を横に振った。

「お連れの男性がみえる時もありますがほとんどの方は、女性おひとりでこられますよ。」


絶句した。
それと同時に厳しい現実をしった。


帰り道、私はふらふらとカラオケに入った。
ひとりになれる場所がほしかった。
カラオケに入ってエコーの写真を見てひとりでわんわん泣いた。
エコーには、出産予定日まで記されていた。


3月7日
この子は、春に産まれる予定だったんだ。


分かっていたことだけれど、中絶をしたくないと気持ちは大きく揺らいだ。
せっかく、大好きな彼との間に出来た子供なのに。
世のお母さんたちが流産をしないように安静にしている中、安静にも出来なかったのにこんなに頑張って生きてくれているのに。
心臓が動いてるのに。
そう思うと涙が止まらなかった。


産みたい。


現実は厳しい。
無理なことはわかっている。


この子を殺したくない。


私は、この翌日つわりというよりもメンタル的になのか吐き気と頭痛で動けなくなり仕事を休んだ。