こんにちは、漢方医(卵)KOUです。
今日は皮膚病について、私が今までみてきた診療形態による治療の仕方の違いを書こうと思います。
診療形態とは、皮膚病を…
① 皮膚科にかかって治療する
② 漢方診療で治療する
③ 皮膚科と漢方診療を併用する
④ その他
です。
あまり漢方に馴染みのない方にとっては、「皮膚病を漢方で治療する?ハテナ?」って感じだと思います。
しかし実は、漢方治療は皮膚病になかなか向いている治療と言えるでしょう。
その理由はこれから説明しますが、大雑把に言うとこうです→ 皮膚病は見た目こそ体の外側(表面)に出ていますが、その病態の原因は体の内側にあることが多く、漢方治療の大きな特徴である養生や寒熱の理念が非常に役立ち、根本的な原因の解決に繋がるからです。(全然まとまってない…)
皆さん一番知りたいところは、皮膚病の治療に上記①②③のどれが最も良いのか?ということだと思います。
その答えは、実は「その人その人、病態によって違う」といったところなのですが、なかなか難治の皮膚病(アトピーなど)でしたら、断然③をオススメしたいと思います。
しかし③は難しいところがあり、「皮膚科と漢方治療者の両者が腕がいいこと、そしてお互いがお互いの治療を理解していて否定していないこと」という非常に難しい条件がつきます…。
この条件がクリアされてないと、患者さんは逆に、最悪 病態が悪化するような被害を受けてしまい、とんだ災難になってしまうかしれません。。
漢方外来には皮膚病の患者さんが多くきます。
にきび、肌荒れ、湿疹、かゆみ、などなど こう言った主訴の人も多くいますが、やはり「アトピー」が断然多い印象をもちます。
そして、漢方外来にいらっしゃるアトピーの患者さんは、難治の人が多いです(すでに一般治療を何年もしているけど良くならない、といった人が多いです)。子供のアトピーの場合は、割と初期でまだキレイな病態の時から母親が漢方外来へ連れてくることも多いですが…。
私は皮膚科医ではないので、あまり生意気なことを言ってはいけないと思うのですが、難治のアトピーの患者さんと切っても切れない関係にあるのは、ステロイド軟膏…その使用の仕方について、です。
「ステロイド忌避」という言葉をご存知でしょうか。。
医師が診察して、ステロイド軟膏の使用が必要な状態の皮膚病である、と診断されたのに、患者さんが「ステロイドは使用したくない」と言って ステロイド軟膏の使用を拒否することです。
しかし、病態は辛いですし、そういった患者さん達は「ステロイド軟膏以外の薬を使って治療する」ことを望んで、外来にいらっしゃいます。
この「ステロイド忌避」は、この30〜40年前から出現しており、その背景には、テレビなどのメディアによって ステロイドの怖い副作用 がたくさん報道されたことが関係している、と考えられているようです。
ステロイドの使用を続けると…
皮膚が薄くなる
皮膚が赤くなる
皮膚が黒くなる
皮膚が硬くなる
皮膚ががぴがぴになる
ステロイドをやめられなくなる
やがて弱いステロイドでは効かなくなり、どんどん薬が強くなる…
などなど。こんな情報が出回り、また難治性のアトピーの患者さんの中には皮膚の状態が上記内容のようになってしまった人もおり、そんな写真や本人の訴えなどにより、かなりの信憑性をもち、何よりも「恐ろしい」という感情から、ステロイド忌避の患者さんが出現したことは容易に理解できます。
実際に、皮膚科の先生は、このステロイド忌避についてどう考えているのか?
それは、私の知る限り、99パーセントくらいの皮膚科医は、ステロイド軟膏使用による上記の副作用を否定しています。
そして、上記のような皮膚症状を起こしてしまうのは、「ステロイド軟膏を適切に使用してないことが原因である」と言っています。
この「適切に使用する」というのが重要なようで、ステロイド軟膏の強さ(ステロイド軟膏には強いもの〜弱めのもの、種類がたくさんあります)、軟膏の塗り方(量、部位、回数など)、が適切でない状態が続くことが良くない皮膚の状態と関連するとも考えているようです。
何度も言いますが、私は皮膚科医ではないのですが、皮膚疾患の患者さんを多く診ていますので(漢方外来で)、ステロイド軟膏については何度も何度も、何人もの先生(皮膚科医)に話を聞いて、説明&実際の症例経過を見せてもらいました。
そして、私はその説明にだいたい納得しました。
ですので、ステロイド忌避の患者さんにステロイドを使用するよう説得するようなことはしませんが(それは私がやってはいけないことですので)、特にステロイド忌避ではない患者さんで、漢方外来で治療中の人には、皮膚科への併診を必要時には勧めています。
私が患者さんに皮膚科への併診を勧めるのは、
・皮膚科医に診てもらった方がいい病態の人(要するに皮膚病が重い人)
・漢方治療であまり効果がない人(ないしは改善が遅い人)
・外用薬(軟膏など)の使用に困った時
・診断がついてない人(何の皮膚病だか分からない人)
などです。
ちなみにステロイド軟膏の処方は、私はほとんどしません(ごくたまに処方しますが)。なぜならプロ(皮膚科医)に任せた方が絶対に患者さんの状態は良くなる、と考えているからです。
私が信頼している皮膚科の先生方は皆、重症の皮膚病態の人には、しっかりと外用薬使用の説明をした上で、数日の間(1週間とか)に再診予約をしています。そこで、処方した薬が効いているか、皮膚の状態が良くなってきているか、外用薬は適切に使用できているか、の確認をしているようです。
私は断言しますが、、もしあなたのかかっている皮膚科の先生が、あなたの皮膚の病態が良くならない(ないしは悪くなっている)のに、何の説明もなく、外用薬指導もなく、生活指導もなく、継続処方だけするようなら、医者を変えた方がいいでしょう。
そう言った中途半端な治療を行う医療者のせいで、ステロイドに対する混乱が起きたと言っても過言ではないように感じます。
前置きが長くなってしまいましたが、、
アトピー性皮膚炎などのかゆみや皮膚のガサガサがひどい時に、強さの合ったステロイド軟膏を使用することで、かなり短期間に皮膚の状態を改善させることができます。
これは、痒みの症状や皮膚の見た目に悩まされていた患者さんにとって、本当に助かることだと思います。ですから、私は辛い皮膚の状態を我慢せずステロイド軟膏を使用することを患者さんにオススメします。
しかし、ステロイド軟膏が改善してくれるのは、「その時の皮膚の状態」だけです。
その人の皮膚病が起こった(ないしは悪化した)原因(や生活習慣)を考え改めないことには、根本解決にはならず、ステロイド軟膏を使用して一時的に良い状態になった皮膚を、良いままで保つことは出来ないでしょう。
この「根本解決である原因追求/生活習慣の改善」を、皮膚科での診療でももちろん指示されると思います。以下のようなことを言われることが多いでしょう。
・ストレスをためない
・スキンケア(身体の洗い方や保湿の仕方)
・食べ物(あまり食べない方がよいものと食べた方がよいものなど)
・その他(個々の患者さんの環境により様々です)
しかし、特に成人のアトピー性皮膚炎の治療などでは、長年の生活習慣を改めることの難しさや、長年の悪い習慣の蓄積などから、治療は難航することが多いです。効果を認めも、良くなったりまた悪くなったりを繰り返して、ゆっくりゆっくりの改善になるでしょう。(それでも諦めずに、地道に養生するしかないのですが)
そこで!!!
漢方薬がかなーーーり役に立ちます!
漢方治療には「標治」と「本治」という考えがあります。
「標治」とは、現在の状態→症状を治すことで、例えば、頭痛や生理痛などのその痛みを取ることは標治になります。
「本治」とは、病態の根本解決となるような治療のことで、例えば、頭痛や生理痛が 冷え が原因で起こっていた人を、冷やさない〜温める ことで、体質改善にも繋がる治療です。
アトピー性皮膚炎に対するステロイド軟膏の使用 というのは、言うなれば「標治」そのものである、と思います。軟膏の使い方が上手ですと、かなり優秀な標治なのではないでしょうか。
そしてこの標治(ステロイド軟膏)を行いながら、本治である生活習慣改善などを行なっていくのですが、、
漢方薬で本治を助ける(導く)ような内服治療をすると、どうでしょう…
治療効果は明らかに、軟膏+生活習慣改善だけよりも良いと思いませんか?
漢方薬には、様々な皮膚病の 本治を助けるような薬がたくさんあります。
例えば、
・皮膚の乾燥を抑えて潤いを与える生薬
・逆に皮膚を乾かすような生薬
・熱を取るような生薬
・温める生薬
・血のめぐりを整えるような生薬…
などなど です。
もちろん、標治になるような、
・皮膚の炎症を抑える生薬
・痛みや痒みを抑える生薬
なども漢方薬にあるのですが、皮膚病の漢方薬による標治は かなり医療者の腕が問われるところですので(下手したら悪化させます)、そんなリスクを背負わなくても、ステロイド軟膏という良い標治(となり得るもの)があるのだから、使用すればいいな と私は思います。(使用の際は皮膚科医からの軟膏コントロールを絶対にオススメしますが)
慢性的な皮膚病には必ず、その人の生活環境、食事、性格が関わってきます。(性格もです!)
例えば、
ストレスがたまり、常にイライラしている人は、身体に「内熱」を溜め込んでしまい、それが 赤くて痒みを伴った皮膚状態を促しやすくなります。
「内熱」をためる原因は他にもあります。
油っぽい食生活、味の濃い食事、酒、蒸し暑い環境に長期にいること、などです。
「内熱」を溜め込んでしまうことが、皮膚病の原因の大きな1つであると診断された患者さんの本治は、「内熱」を溜めないような生活改善、ということになります。
「内熱」をためないように、ストレス発散したり食べ物に気をつかったり…。。
言うは易しですが、実際に行うことは本当に大変ですよね。
漢方治療を併用すれば、気を巡らせてストレスを発散しやすい漢方薬や、内熱を取り除く漢方薬も使用することができるのです。
もちろん、「薬に頼って生活改善をしない」は絶対にダメですし、そんな患者さんにはあまり薬を処方したくないな、とも思います。
ですが、
もし慢性的な皮膚病で困っている人がいて、もしも「本治」ということをあまり意識してこなかったのであれば、それを意識し行動することで、その皮膚病は良い方向に進むかもしれません…。
ぜひ、皮膚でお困りのことがある人は、考えてみてください。
本日のまとめ
・漢方診療は、皮膚病には向いている治療であり、特に難治性の皮膚病では、皮膚科での治療+漢方治療をオススメする。
・↑しかし、上記診療形態では、「皮膚科と漢方治療者の両者が腕がいいこと、そしてお互いがお互いの治療を理解していて否定していないこと」という条件がないと上手くいきにくい。
・アトピー性皮膚炎は、漢方外来にくる皮膚病の患者さんの中でも多い主訴である。
・特に難治性のアトピーの患者さんとステロイド軟膏は、切っても切れない関係にある。しかしこの30年くらい前から、「ステロイド忌避」と呼ばれるステロイド軟膏による治療を拒否する人がいる。
・ステロイド忌避は、ステロイドの副作用により皮膚に悪影響が出る、というメディアの情報から始まったと考えられる。
・実際の診療をしている皮膚科医の大多数は、ステロイド軟膏による メディアが報道したような副作用を否定しており、それら(皮膚が硬くなったりガビガビになったり)は、長期に及ぶ皮膚の炎症→ステロイド軟膏を適切に使用できていないことが原因である、と考えている。
・漢方の考えには「標治」と「本治」がある。
・「標治」とは、現在の状態→症状を治すこと。
・「本治」とは、病態の根本解決となるような治療をすること。
・ステロイド軟膏は、いわば アトピー性皮膚炎における「標治」と考えることができ、使用方法が適切であれば、かなり優秀な標治になり得る。
・しかし標治だけを行なっても、病態の根本解決にはならず、症状は一時的に良くなっても再度増悪することが多く、本治を同時に行う必要がある。
・皮膚病における本治も、生活習慣の改善(食生活やストレスなどをふくめた)であるが、なかなか効果を感じられるまでには辛抱がいる。
・漢方薬で本治を助けるような内服を追加することで、治療効果は格段に良くなるだろう。