こんにちは、漢方医(卵)KOUです。


今回は便通異常(下痢/便秘)について書こうと思います。


便通異常は、内科外来でも漢方外来でも多い相談ですが、とても個人差の大きい症状だと思っています。


もともと胃腸が丈夫なタイプの人は、朝に健全な便通があることが当然なので、たまに便秘や下痢が起こるとびっくりして、逆にすぐ病院に受診されたりします。


もともと胃腸が弱い(というよりも敏感な)タイプの人は、下痢や便秘には慣れっこなので、毎日下痢していても、一週間便通がなくても、平気な顔をしている人もいます。


なぜ、このような違いがあるのでしょうか?

これには、生まれ持った体質が大きく関係しています。

もちろん、先天性(生まれつき)だけでなく、後天性(環境因子)の影響もあっての体質なのですが、胃腸に関しては、かなりこの先天要因が強い、と個人的には考えております。


何を隠そう、私が後者の胃腸虚弱タイプだからです(笑)。

小学生の頃には一週間程度の便秘は当たり前、よく腹痛や下痢も起こすし、何より、食が細かった(少食)です。


漢方ではこのような体質(ないしは症状)を「脾虚(ひきょ)」と言います。


今では、私のこんな幼少期を誰も信じてくれない程の食欲(笑)と、毎日快便ですが。。

私の場合、漢方薬局の娘としてうまれた、という環境をフルに利用して、子供の頃から脾虚改善薬を飲んでいたり、食生活もかなり気を配っている成果だと思いますが、それでもやはり、お腹を壊したりする頻度は、今でも多い方だと思います。


では、後天的に胃腸を丈夫にすることは不可能か?と言われたら、「そんなことはありません。努力するのみです!」と答えます。

逆に、せっかく素晴らしい先天の丈夫な胃腸を持ち合わせていたのに、養生を怠りまくった結果、胃腸虚弱になってしまった、、なんてこともあります。


諦めずに養生を続けることが大事、そう思います。


西洋医学では

食道十二指腸小腸(空腸/回腸)大腸(上行/横行/下行/S状結腸/直腸)肛門

という流れで食物が通ります。その間に必要な栄養素が消化・吸収されます。


便通異常の場合では、病院では特に大/小腸の異常を疑い検査治療することがほとんどです。

と言っても、特別な検査や治療を必要とする便通異常の病気は、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病などの血便・下痢を主とするもの)、癌などの腫瘍(便秘や血便の症状が出ることもある)くらいです。


胃腸炎や普通の便秘(基礎疾患のない)の場合では、薬を処方されて様子をみるよう言われることが多いでしょう。


下痢をしている場合は、お腹の調子を整える整腸剤(乳酸菌など)が処方されることが多いです。特別症状がひどい時(かつ感染症ではない時)は下痢止めが処方されることもありますが、下痢止めは 腸の動きを無理矢理止めてしまうものなので、あまり乱用しない方がいいでしょう。


便秘をしている場合は、その程度に合わせた下剤が処方されます。


下剤には、腸管を刺激するタイプの いわゆる「強い下剤」と、腸管への働きよりも、便を柔らかくするような作用を主とする「弱い下剤」があります。

それぞれその中でも種類がありますが、「強い下剤」ではセンナなど、「弱い下剤」では酸化マグネシウムなどを服用している人が多いと思います。


いずれの薬も、調子が悪い時にたまに服用する程度なら良いですが、中には「やめたくてもやめられない」連日服用が続いてる人も多いのではないでしょうか。


乳酸菌を毎日 薬として摂取しなくても、自分の腸内細菌が整っているといいですね。


下剤で便を出す習慣になっている人は、自分の力で排泄する力(働き)が弱まる一方です。

また刺激性の下剤の常用は、徐々に低容量では効かなくなってくることや、腸の粘膜を黒くしてしまう(大腸メラノーシス)副作用を引き起こします。


以前、漢方外来に「過敏性腸症候群」と診断された、下痢と便秘を交互に繰り返して困っている婦人がいらっしゃいました。

その人は、下痢が続くと下痢止めを内服し、そうすると数日便秘になるので今度は下剤を内服し、また下痢での繰り返しの生活を数年送っていました。


これでは本末転倒なので、治るわけがない、と時間をかけて説明し、生活習慣の見直しと西洋薬漢方薬への切り替えを行い、3ヶ月程度でこの腸管の悪循環から脱出することができました。


この人の便通異常の原因としては、

1. ストレス(仕事と出勤に対する)

2. 水分摂取過剰(便秘が怖いという強迫観念からだった)

3. 睡眠不足

4. もともとの胃腸虚弱

の順に大きく影響していると考え、それに合った漢方薬と、できる限りの生活改善で良くすることができました。


腸の悩みが改善された彼女はイキイキし、表情も明るくなり、「出勤途中に駅のトイレに駆け込まなくてよい幸せ」を感じているといいます。


彼女のような、過敏性腸症候群と診断されるような病態は現在とても増えているので、後に別項目で書きたいと思いますが、、


基礎疾患のない(癌などの)便通異常では、生活習慣の改善がもちろん根本解決ですが、時間がかかることが多く、辛抱を要するし、本当にそれ(改善すべき生活習慣)で合っているか、とても不安になると思います。


個人的には、生活習慣の改善+その人に合った漢方薬治療を行うことがおススメです。症状改善がはるかに早いし、医療者(漢方専門薬局の薬剤師など)に体調の相談もでき、一石二鳥です。

*それには、信頼できる漢方薬局を探さなければならないが(それについてもいずれ書こうと思います)。


改善すべき生活習慣としては、外来をしていて多いなと感じるのは


1. ストレス

2. 多忙による生活習慣の悪さ(睡眠など)、疲労

3. 食生活の内容(冷える食生活で下痢・油もので下痢・野菜不足で便秘・よかれと思って試している健康食品での便通異常、などなど)前回のブログ「胃腸の悩み ~胃もたれ~」で書いた食事注意点が、便通異常でも使えますので、ご参照ください。

4. 水分摂取過剰または不足

5. 冷え(特にお腹まわりの)

6. 運動不足


などです。


ぜひ、見直してみてください。

あなたが生活習慣を変えて、それに対するお腹の調子の変化を感じることが、改善への道のりの第一です。


本日のまとめ

便通異常は、もともと胃腸が強いタイプの人とそうでない人で、かなり個人差の多い症状。

いずれも、時間はかかるが、生活習慣改善による根本治療が大事。

便通異常の中で、特別な治療が必要なのは、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)や腫瘍(癌)などで、これが疑われる時は検査を優先する。

下痢に対する乳酸菌内服や、便秘に対する下剤内服を続けても、便通異常を引き起こす腸管は改善しない。

生活習慣として注意すべき点(上記記載)を改善すると共に、漢方薬治療を行うと、症状改善の近道になる。