学校に行かなくなってから、あっという間に3週間が過ぎた。
今頃かつての戦友たちは、前期の締めくくりで作業報告書(所謂レポート)の作成や試験勉強に忙しくしていることだろう。
学校に行かなくなってから2週間ほど経った頃、明らかに体調が良くなった。
学校に未練があり、何にもやる気は起きなかったが、肌荒れが治り、便秘が緩和され、一番の悩みだった目の充血が消える頃には、「やはりこれで良かったのかも知れない」そう思えるようになってきた。
この一年のハードな生活は確実に私から多くのものを奪っていった。
それは若さであり、健やかさであり、心の平穏だった。
毎週1回たっぷり眠れたとしても、毎週6日は2~3時間しか眠れない。
一日じゃ疲れなんて取れやしない。
週に一日眠れたとしても、ほっこりする時間がない。
何もしないでいる時間がない。
ディズニーアニメ「くまのプーさん」に出てくる
クリストファー・ロビンがラストシーンでプーにお別れを言うシーンがあります。
「僕はもう、何もしないでいるってことができなくなるんだ。
だからプー、君はここで、これからも僕の代わりに何もしないってことをしてくれる?」
わかるっっっ。
何もしない時間って大事だ。
この世で一番の贅沢かもしれない。
機械ですらメンテナンスや電源OFFにする時間が必要だ。
"目の下のクマがすごいね"
"目が真っ赤だよ"
数か月前からこう他人に指摘され始め、うすうす気づいていた自分の変化は、私に強いコンプレックスを抱かせた。
一日6~8時間眠れて、ぼーっとする時間がたまにはあって、自分で食べるものを自分の手で作って、ゆっくりコーヒーが飲める。
そういう何の変哲もない日常がこんなに貴重だったとは...。
オズの魔法使いに登場する、わらのカカシ、ブリキのきこり、臆病なライオン。
彼らはそれぞれ、知恵・心・勇気をもらうためにドロシーと旅をするが、旅をしていくうちに自分自身の中に求めるものがあったことに気付く。
厳密にはそれとは違うかもしれないが、とにかく。
学校に行って、仕事もして、頑張れば必ず自分の欲しい未来を手に入れられる、そう思っていたけれど、他にも大切なものはあった。
小さな日常の何気ないことばかりだけど、ほんとに悩んだんだっ。
私の目はだんだん死んで行った。
白目は充血しているか、黄色くなっていた。
肌もなんだか黄色くて、何かの病気になったのかと思った。
健康であることがこんなにも大事だと、健康を失って初めて気づいた。
健康のために学校を辞める気になったか?
実は半分はそうです。
ここまで顕著に体調が良くなってくると、学校生活への未練も次第に薄れていく。
やはり無謀だったのだろうか...と。
私がもっと生真面目で、一度始めたら何がなんでも続けなれば!と頑固に自分を追い込む性格であったなら、あのまま続けて確実にうつ病になっていただろう。
気が張っていたし、自分の興味のあることだったので最初は気付かなかったが、ココロとカラダが悲鳴をあげていたのだ。
こんなギリギリの生活をしていて大丈夫だろうか、もしも何かあったら立ち行かなくなるじゃないか...。
仕事が出来なくなれば、学費や生活費が賄えなくなってしまう。
例え1年乗り切っても、あと3年乗り切れるのか?
あと3年もこのギリギリな状態を続けて大丈夫なのか...。
入学した頃は、"何かあったらその時はその時。
やる前に取り越し苦労して、やらず終いはやめよう" そう思っていた。
辞めたいと思う時が来るとは思いもよらなかった。
プロゴルファーの石川遼くんも、「失敗する前に対策を考えるのはやめよう。失敗したときに考えよう。」といつも自分に言い聞かせているという。
そのこと自体は間違ってはいないと思う。
ただ、実際に失敗したとき、この言葉は無意味になる。
人生に無駄なことはない。
自分で無駄だと決めつけなければ。
現に今の私は中卒だった私とは別人だ。
美術の学校に行こうと思ったから、高卒認定試験を受けようと思えた。
そういう目的がなかったら、
敢えて高卒資格を取ろうとは思わなかっただろう。
これは今後、必ず役に立つ。
私がこれまでの自分の人生の中で、
本当にやり遂げたと思えるただ一つのことだ。
もしこれを読んでいる人の中に中卒の方がいて、なにか特別な技能などお持ちでないのであれば、私は高校卒業認定資格を取ることを強く勧める。
それだけでは何の変哲もないものだろうが、
履歴書の最終学歴が高卒であるというだけで、
今まで感じてきたコンプレックスも軽くなる。
それだけでも大きな価値があると思う。
そしてご自身のお子さんが私のように
特に理由もなく高校を辞めようとしているという親御さんがおられたら、
命をかけて卒業するよう説得すべきだ。(←2021年現在、この気持ちは少し変わっているので後述する)
私は自分の意思で高校を辞めた。
素行が悪かったわけでも、成績が極端に悪かったわけでもなく、ただ"高校に行く理由がない"という理由で辞めた。
そして長い間、高校卒業資格が欲しいと思う日が来るとは夢にも思わなかった。
その私が言うのだから、間違いない。
学ぶことの大切さに気づくのはずっと後になってからだが、実際に勉強だけに専念できる時期はごく限られている。
大人になって学ぼうとしても、仕事との両立はしんどい。
学生だけやっていられるというのは、ありがたいことなのだ。
なのに、私の知人の大卒者のうちの9割の人が、「もっと勉強しておけばよかった」と言う。
学ぶことの大切さを、当時から理解出来ていたならと今でも思う。
ただ、最終的に27歳で高卒資格は取れたので、後でも何とかなるものである。
そのことも知っている。
高校は本当につまらなかったので、辞めたことに対する後悔というものもあまりない。
ただ、もっと早く学ぶことの面白さに気付けていたら良かったのに、という後悔があるだけだ。
いくらでも後で挽回できるが、それはイバラの道となるだろう。
しかし歩めばかならず報われる道でもある。
あなたが今、自分の過去について何か後悔していることがあるのなら、それは挽回するに相応しい時がやって来たという証なのではないだろうか。
その感覚は信じてよいと思う。
終わり。
(加筆修正 14th Sep 2020)
...このブログを読んでくださっている方のお子さんや身近な誰かの子供さんがもし、高校に行かない・行きたくない、もしくは既に高校生で、高校を辞めると言った時、
①何のために辞めるのか(理由がなく、ただ怠けたいだけなら辞めない方がよい)
②やりたい事があるのだとして、それは本当に高校を辞めてまで今すぐやらなけらばならないことなのか(高校卒業後に始めるのでは遅い理由は何なのか)
③高校を辞めたら当然働かねばならないが覚悟はできているか(親のスネをかじらせてはならない)
④日本には中卒でできる仕事は限られているが覚悟はできているか
⑤世の中には高校を卒業しなければ受験資格すら得られない物事が多いが覚悟はできているか
⑥働き出してから高卒資格を取ろうと思ってもイバラの道になるが覚悟はできているか
⑦高卒資格など一生必要にならないと今は思っても、必ず欲しいと思う日が来ることになるが覚悟はできているか
これだけは確認しておいて欲しい。何なら紙に書いて、いつでも目に留まる所に貼るなりした方がよい。特に⑦は間違いない。絶対にないと思っていた私が言うのだから間違いない。
高校生だけやっていればそれでよい、そのことがどんなに恵まれたことなのか(私はバイトもしていたが)、無意識に自分が持っている特権を認識したうえで、その特権を手放す覚悟があるのかどうかだ。
高校を卒業してからの人生の方が遥かに長いが、中卒でやりたい事・できる事とは限られている。間口が狭まればそれだけ可能性も狭まる。高校生では自分自身で決断できることなど限られているので、本当に命がけでよく考えてから決断して欲しい。
私個人は、高校を辞めたあとすぐに働きはじめ、同級生がお小遣い制で欲しいものも満足に買えない時、自分の金である程度好きに遊びつつ貯金もできたので後悔はしていないのだが、高校を辞めて10年ほど経った頃にやりたい事が見つかり、その資格を得るために専門学校へ行かねばならず、高卒資格が必要になった。そして血のにじむ努力をした。それは誰にでも出来ることではない。
学校だけでなく、いつか働きたいと思う仕事が見つかっても、中卒ならば応募資格すらないことも少なくない。私の妹たちも中卒で、高卒資格を取ろうとしている気配はない。それでもバイトをして暮らしているが、残念ながら彼女たちには選択肢が少ない。
楽に権利を得られるのならそれに超したことはない。与えられた権利は行使すべきだ。高校へ行かない・辞めると決断するその前に、今一度よく考えてもらいたい。
逆に言えば、高校へ行かず・辞めてまで今やらねばならないことがあるのなら、思う通りの道に進むべきである。親であろうと、やりたい事を阻止することはできない。やらせるべきだ。学歴で人間性は測れない。日本の政治家を見てみればおわかりであろう。素晴らしい学歴があっても実際の職務や人間性の面ではどうであろうか。学歴なんぞ取るに足りないものである。人間性より学歴を重視するような人間とは、大した人間ではない。そのような浅はかな人間に認められる価値などない。
学歴というのは本来、なりたいものになるために知識を得たり訓練したりした結果として得られるものである。学歴を得ることそのものが目的なのではないはずだ。
自分がなりたいものになるために、今踏み出すべき一歩とはなんなのか。これを考えるべきである。
それが高校へ行っていては踏み出せない一歩なのであれば、致し方ない。実際のところ、そんな物事など人間社会にはほとんどないと思うが。
当事者だった者として、20年経った今だからこそ思うことなど偉そうに書き連ねてはみたが、高校を辞めたら人生が終わるというわけではない。名門大を出ていても法を犯して人生を終わらせるようなバカも大勢いる。
次の世代の若者たちの明るい未来を願ってやまない。
(加筆 19th July 2021)