今は連絡先も知らない昔の友人の体験談。
和田くんはその日、友人複数名と夜通し飲んで騒いで泥酔し、気がつくと和田くん宅で全員雑魚寝状態の中、目を覚ました。
男ばかり複数名で、おまけに全員が酒臭いのだからさぞ目覚めは悪かったことだろう。
そんな目覚めを更に悪くするものが、彼の目に飛び込んできた。
白いスーツに身を包み、豊かな白ひげを蓄えたその初老の男性(の人形)は、不気味な笑みを浮かべながら見慣れたフローリングに不自然な体制で横たわっているではないか。
やってもうた。
誰だ!?
連れて(持って)来たのは!
彼は慌てふたもうて全員を叩き起こす。
誰が・・・?
などとはもはや大した問題ではない。
とにかく返さなければ!
窃盗罪に問われ兼ねない。
5~6人で持ち上げてみる。
思いの外重い・・・。
全員で持ってもこれだけ重いのだ。
・・・おそらく全員で持って来たのだろう。
ならば連帯責任だ。
どうやって返したものか。
こんな時、先日のニュースのように、川に投げ込むなどというワビもサビもない方法を彼らは思いつかなかった。
そこはエライ。
褒めてやってほしい。
若者らはそれからどしたかというと、日が暮れるのを待ったのだった。
人目を避けるためだ。
夜も更けたころ、5人の若者は小太りな異邦人の男性(の人形)の体を抱え、誰もいない近くの公園へと向かった。
ある一つの計画を実行に移すべく・・・。
彼らは待った。
公園から人がいなくなるのを。
近所で実行に移すこは危険を伴ったが、大の大人(の人形)の体は5人がかりでも重く、とても遠くへは運べそうになかった。
彼らには全く記憶がなかった。
全員で部屋へ帰った記憶、そしてその途中で思いがけずたまたまそこにいた、アメリカから来た陽気そうなおじさん(の人形)を無理やり部屋へ連れ込んだ記憶など・・・。
だが起こってしまったものは仕方がない。
何とかこの状況を打破しなければならない。
それも、誰が連れ去り犯なのか、永遠にわからない方法でなければならない。
若者たちは紳士(の人形)を公園のベンチに横たえ、公園の中にポツンとある公衆電話に入ると、あの紳士(の人形)の自宅と思しき番号へ電話をかける。
たぶん、あそこだ。
受話器を握る和田くんに緊張が走る。
「はい!お電話ありがとうございます、ケンタッキー・フライドチキンOO店OOです」
相手が受話器を取ると、和田くんは雄弁に話し始めた。
まるで何年も生活を共にした家族と話すかのように。
「
もしもし、わしじゃ。
実は夜中にひとりで散歩に出たきり帰れなくなってしまったんじゃ。
すまんが、3丁目の公園まで迎えに来ては貰えんかのう」
ガチャッ・・・・・・ツーツーツー・・・。
それから後、カーネル・サンダース(の人形)は閉店後には必ず店内へとしまわれるか、そこから動けぬように足元をネジで固く固定されるようになったそうじゃ。
めでたしめでたし。
(写真引用元 流通ニュースhttps://www.ryutsuu.biz/promotion/k071947.html
終わり。
(加筆修正 15th Sep 2020)

