子供の声と走る足跡に 昔を思い出した
町を離れ街へ出た あの日
心配そうな顔をして 見送ってくれた母
最後まで反対してた父は 家には居なかった

親の反対を押し切り 一人歩いた外れ道
何も知らずに飛び出て 行き着いたは都会
何に急ぐか通行人の中 ただ唖然と立ち尽くした
着いたその日に思い出した あの見慣れた並木道

家をあとにし 田舎景色を 焼き付けようと
ただ、ただ…見ていた 造りを色を 育った我が家を
駅の前にある見慣れた車 古ぼけたセダン
走って確かめる 親父の愛車

狭い駅を見渡した 俺も乗った、あの車の主を探して
そして見付けた お土産袋を片手に売店前に立つ父
いつもより小綺麗な 心なしに焦る背中
声を掛ければ 来たかと言わんばかりに俺を見た

いつの間にか 越していた背
気が付いたら 目線は下にあって
そして知る 昔は大きく感じた父の背が
こんなにも小さかったんだと


久しく帰る家 その道なりさえも懐かしくて
駅からの道 短いはずなのに長く感じて
あった筈の公園が いつの間にか一軒家に変わっていた
気付けば10年 町は変わり変わり、新たな一年を廻らせていて
昔の面影は僅か 帰った家も変わっていた

それでも町の匂いは 何一つ変わらずに
微かに香る魚屋の匂い 草苅の後の青い匂い
学生時代を思い出した

きっとこれからも変わり続ける田舎町
それでも失われないでいて欲しい
この香り 雰囲気 人柄 思い出
いつまでも 笑顔が絶えなかったあの町を 何時までも…



「おかえり」
「変わっちゃっただろう?」
「でもねぇ…」
「変わってないもののほうが多いんだよ」
「おまえも変わらないでいてよかったよ」
「さ、お食べ、向かいの魚屋の干物だよ」



お か え り . . .