三浦祐之著<口語訳:古事記>

◎天からの声、アマテラスの横に居るタカギから。

 すると、そこにまた、タカギの大神の言葉が聞こえてきた、

 「天つ神の御子よ ここから奥の方に入ってはいけませんぞ 荒ぶる神がひしめいているからだ 今すぐに 天よりヤタガラスを遣わそう かならずや そのヤタガラスが 導いてくれるであろう 御子は ヤタガラスの発ち行くあとをたどって行きなされ」といった。

◎八咫烏:三本足の大きなカラス。カラスは不吉な鳥とされているが、古くは神の使いと考えられていた。カラスは頭がいい。人9、イルカ5、霊長類3、鯨2、カラス1.5、犬、猫と続くとは、ほんまかな。昔話ではカラスは人と共存したり、可愛がられたり、語られたり、現在と様子が違う。山にいるホシガラスは何度か見た、カラスと同じぐらいの大きさ、黒い身体にパンダのような白い斑点がある、こやつは山の中で可愛いよ。よく見かけるカラス、“はしぶと”“はしぼそ”の二種があるらしいが、これも確実には区別がつかない。

 

◎紀伊半島の端から奈良橿原まで進んで行く。

◎「お前は 何者だ 名は」「○〇と申します 以後お仕え申します」このパターン、TVドラマでもよくあったシーンである。「そちは 何者じゃ」「ははは ○〇と申します 以後 お知りおきを・・」

「名前を問われ応えるというパターンは服属するということを語っている。この道中の間に幾人かの人が現れ服従していく。

◎吉野の河上。河で魚を獲る人。「なんじは誰だ」「ニヘモツノコと申します」阿陀の鵜飼の祖である。

◎山の中。「なんじは誰だ」「イヒカと申します」吉野の首(おびと)らの祖。

◎また山の中。「なんじは誰だ」「イハオシワクノコと申します」吉野の国巣(国栖くず、土着民への蔑称)

 土蜘蛛:倭王朝に服従しない土着の豪族を称して言う。土窟の穴居していたものも。

◎山を踏み超えて宇陀に出た、そこで事件が起こる。

◎エウカシとオトウカシの兄弟がいた。まずヤタガラスウを遣わし、二人に問うた。

 「今 天つ神の御子がお出ましになった なんじどもは お仕えいたすか」

兄エウシカは、鳴り鏑を構え、遣いのヤタガラスに射掛け追い返した。そして、エウシカは待ち構えて、天つ神の御子を撃とうと軍を集めたが集まらず、お仕えしますと偽り大きな殿を作って、殿の中に堕としの仕掛けを作り待っておった。ところが弟のオトウカシが先回りして、兄の悪だくみを明かした。エウシカは反対にその穴に堕とされ潰され死んでしまった。お仕えしたオトウシカはもてなしの品々を差し出し、ことごとく軍人に賜わった。この時の宴で、天つ神の御子は歌をうたった。オトウシカは宇陀の水取らの祖である。

 うだの たかきに        宇陀にある 高い山城で

 しぎなわ張る          鴫を獲る罠網を張ったよ

わが待つや しぎはさやらず   ところがどうだ わしらが待つ 鴫はかからず

いすくはし くぢらさやる    磯も麗しい 大物の鯨が引っかかったぜ

こなみが なこはさば      しわくちゃ妻が おかずを欲しいと乞うたなら

たちそばの みのなけくを    タチソバの実のごと 身の無いスジ肉を

こきしひいね          こんちくしょうめ

うはなりが なこはさば     後にもらった若妻が おかずを欲しいと乞うたなら

いちさかき みのおほけくを   イチサカキの実のごと 身の多い美味い肉を

こきだひいね          こんちくしょうめ

ええ しやごしや        ええい へなちょこども

ああ しやごしや        ああよ 腰抜けどもよ