三浦祐之著<口語訳:古事記>

◎ここにようやく、ヒコホノニニギが降りることになった。

 その前に、アメノウズメが、見知らぬ奴:その神に向かって問うと、「わたしめは、国つ神サルタビコと申します。天つ神の御子が、天降りなさると聞き、先払いとして お仕え申しあげたい、と待っていました」

◎先生:日本書記では、サルタビコは、口や尻が赤く鼻が長い、天狗の前身の様な神。最初の出会いで対立関係が生じるかと思われたが、アメノウズメの迫力で、拍子抜けするほど従順な態度であった。

◎さてここに、仰せを受けたアマツヒコヒコホノニニギは、高天が原の御座所(みましどころ)から立ち上がると、天にかかる八重のたなびき雲を押し分けて、力強く道を踏み分け踏み分けして、天の浮橋に到りつき、しっかりとお立ちになると、そこから一息に、筑紫の日向(ひむか)の高千穂に高々と聳える嶺に天降(あもり)された。

◎するとそこへ、アメノオシヒとアマツクメの二人が出迎え、大きく堅い矢筒を背負い、握りに大きな瘤の付いた太刀を取り佩き、弦く強く張った弾き弓を手に持ち、牡鹿の角で作った、鋭く磨いた鏃(やじり)を付けた矢を脇に挟んで、先払いとしてお仕え申しあげた。

★アメノオシヒ:大伴氏の祖先神。★アマツクメ:久米氏の祖先神。戦闘集団として天皇家に仕えた。

◎ここからは、韓の国(からの国:朝鮮半島:)に向き合い、笠沙の岬にもつながり通っており、朝日が海からまっすぐに昇る国、夕日がいつまでも輝き渡る国である。この地には、ほかに比べることのできない素晴らしいところである、といい、土の底を磐根に届くまで深々と宮の柱を掘りたて、高天が原にも届くほど高々と氷木を聳やかした宮を造って、そこに住んだ。

◎お供は、

★アメノコヤネ:天の岩戸で祝詞を奏上した。中臣の連の祖神。藤原家。

★フトダマ:天の岩戸で鏡を掲げた祭祀の神。忌部(いんべ)の連の祖神。のちに失脚。

★アメノウズメ:踊りの神。祭祀に関わる巫女の一族。

★イシコリドメ:天の岩戸で八咫鏡を作成した神。鏡作りの連の祖神。

★タマノオヤ:天の岩戸で八尺の勾玉を作成した神。玉祖の連の祖神。

この五柱はアマテラスを天の岩家から引き出した神。それと。

★オモヒカネ:天の岩戸で軍議を助言、思慮の神。

★アメノタヂカラヲ:天の岩戸で岩戸を蹴散らした腕力の神。

★アメノイハトワケ:岩戸の管理をしていた門番の神。

 それと

★八尺(やさか)の勾玉。

★八咫鏡(やたかがみ)。鏡を自分だと思い祀れと命じた。

★草薙の剣。

 

◎アメノウズメは道案内をしたサルタヒコを無事送り届けます。伊勢湾で海に棲むすべての生き物に、「神の御子に仕えるか」と尋ね、みなが、「お仕えします」と答えたが、ナマコは返事がない。「何も答えることができない口は こうしてくれる」と刀で口を切って裂いた。ナマコの口は横に咲けている。

◎サルタビコは、先払いにお仕え申す前のこと、伊勢の国で漁をしており、貝に手を挟まれ溺れてしまい、海の底で沈んでいたことがある。先生:間抜けなお方、赤い口や尻、高い鼻、この一族は化粧をするか、仮面をつけていたのでは・・。