私は文系の人間なので、小説やエッセイなどを読むことが多いですが、たまに理系の本を読みたくなることがあります。
この本もそんな一冊です。
「元素」という、あの化学の授業で必ず出て来る"水素H" から始まる「元素周期表」に関わる物語です。”水兵リーベ、僕の船〜” などと覚えた記憶がありますね。
副題に「93〜118番元素をつくった科学者たち」とあるように、近年の元素発見(生成)にまつわるエピソードが面白く紹介されています。
この本を読むまで、原子番号が118番まであること(=元素名が118種類もあること)や、93番以降は天然には存在せず人工的に作られたもの、ということを知りませんでした。
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ちょっと復習してみました。
そもそも「原子」って何?
物質は原子からできている。その原子は原子核とその周りにある電子でできている。原子核は陽子と中性子でできている。そして原子の種類は陽子の数(=原子番号)で決まる。
では、「元素」」って何?
原子の種類を表す概念です。原子番号によって分けられ、陽子の数が同じなら同じ元素の原子ということになる。
例えば、水(H₂O)は、水素(H)と酸素(O)の2つの元素でできている。水の分子は、水素原子2つと酸素原子1つが結合してできている、ということになります。
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プロローグは、日本人にとっては忌まわしい原爆*が、1941年にアメリカのトリニティ核実験場で誕生した場面から始まります。(そこは今や観光施設になっているとか!)
*従来からあったウラン(U 原子番号92)を原料として核分裂させたもの。ちなみに長崎に落とされた原爆はプルトニウム(Pu 原子番号94)が原料。軍事研究が時代の最先端技術なのは、今も昔も変わりませんね。
もちろん人工的に新しい元素を生成する方法も書かれていますが、私には全く理解できませんし、想像もつきません。サイクロトンの中でイオンを高速に加速し、特定の元素の同位体に衝突させて、新しい放射性同位元素を作る???
第二次世界大戦後10年ほどの間、新しい元素の発見はカリフォルニア大学バークレー校を中心とするアメリカの研究機関の独壇場だったようです。
しかし、その後の米ソの冷戦という政治事情が、研究開発にも影を落とすようになります。ソ連も当然のことながら大戦中から原爆(核分裂)の研究を進めていました。宇宙開発と同様に、ミクロ宇宙でも米ソの競争が1960年代から70年代にかけてあったそうです。その結果、原子番号102番から105番まで、米ソで全く別の元素名が存在するという事態にまでなりました。
1970年代からはドイツ(当時は西ドイツ)も新元素生成に参戦して、それぞれが生成した元素に勝手に名前をつけたためカオス状態になり、決着が着いたのは1990年代になってからというから驚きます。
それぞれの国のノーベル賞級の天才学者たち(実際にノーベル賞受賞者が多数)が繰り広げる新元素合成レースは、莫大な費用と膨大な時間がかかります。失敗ももちろんありますが、その過程で人間のドロドロとした本性が見え隠れする状況にもなります。自分や組織の名誉とメンツ、競合相手を出し抜くため情報を隠したり裏工作をしたり、疑心暗鬼になったり、はてはデータを捏造したり。そんな裏話を読むと、やはり彼らも人間なんだと納得します。
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そして忘れてはならないのが日本の理化学研究所(理研)の快挙です。2015年に合成に成功した元素113番は「Nh ニホニウム」と名付けられ、ちょっとしたニュースになったのを覚えています。現在ではアメリカが合成実験から撤退し、ドイツも研究を中断しているので、日本の理研とロシアの研究機関に119番以降の元素を作る期待が寄せられているそうです。この本には書かれていませんが、中国も密かに研究を進めているようですね。
本書は化学を扱った内容ですが、膨大な資料と現地でのインタビューをもとに化学ジャーナリストの手によって書かれたノンフィクションです。元素開発にまつわる面白いエピソードを多く紹介していて、文系の私でも最後まで飽きることなく読めました。化学?なんて興味ない、という人にもオススメの内容なので、ぜひ手に取ってほしいと思います。
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追記
巻頭にある元素周期表を繰り返し見ながら読み進めるのですが、元素名の由来がなかなか面白かったです。
97番 Bk バークリウム、98番 Cf カルホニウム→合成したカリフォルニア大学バークレー校に因む
96番 Cm キュリウム、99番 Es アインスタイニウム、100番 Fm フェルミニウム、102番 No ノーベリウム、111番 Rg レントゲニウム、112番 Cn コペルニシウムなど多数→それぞれ有名な科学者の名前から
地名や人名から名付けられた元素名が一番多いようです。
