2024年上期の芥川賞受賞作、松永K三蔵の「バリ山行(さんこう)」を読んでみました。
タイトルの「バリ」とは「バリエーションルート」のことで、登山で登山道以外の地図に書かれていないルートを自分で探して踏破することを「バリ山行」というらしいです。
ちなみにミドルネーム”K”を入れた経緯はこちらで↓
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あらすじ
建物外装修繕を専門にする50人ほどの会社に転職して来た主人公の波多は、誘われるままに社内にできた登山グループの六甲山登山に参加します。
そこで社内で変人扱いされ孤立している職人気質のベテラン社員妻鹿(メガ)が、敢えて登山道を外れてバリエーションルートの登山をしていることを知ります。
親睦目的の登山に物足りないものを感じた波多は、ある日妻鹿についてバリ山行することになるのですが.....。
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著者は西宮在住で、六甲山系にはよく登っているので、登山ルートが細かく描かれています。私がよく歩いたルートが出て来たり、あの辺りかな?と思いながら読む進むことができました。(ただしバリエーションルートは歩いたことがありませんが)
社内にできた部活動は、休日のこととはいえ、どうしても会社の雰囲気を持ち込んだり、仕事絡みの会話が増えて来ます。トップの経営方針の変更に動揺する(あるいは反対する)社員の動向や人間関係が、親睦目的だった登山活動に次第に亀裂をもたらすことになるというのは、よくあるシチュエーションです。
そういう意味では平凡な設定なのですが、日常と非日常を対比させる中で、主人公の心情の迷いが、そのまま登山に参加する気持ちにもリンクして、影を落とすようになる過程が丁寧に書かれているのが評価されたのでしょう。
文章は読みやすくて、バリエーションルートを進む不安感や緊張感が手に取るように伝わる書き方です。芥川賞というより直木賞を受賞してもおかしくない内容でした。
エンディングは唐突で、その後の展開を読者の想像に委ねることになるのですが、個人的にはちょっとスッキリしない終わり方だったのが残念。
読みながら、主人公の真似をして六甲山系でバリ山行をやってみたいと少しだけ思いました。でも冷静に考えたら、地図読みもろくにできなかったらリスクがありすぎるだろうと、すぐに撤回💦。

