小説本編3

13歳以上で構成された、グループ、各隊は、現在日本各地にある研究所を、1~2の隊で警備している。
前は、20隊あった各隊も、いまでは9隊までに減ってしまっている。いつしか、数少ない隊を色で順位付けし、モンスターの討伐数を争うようになっていた。
ちなみに、1位が、黒、2位が、白、3位が、赤、4位が、青、5位が、黄色、6位が、オレンジ、7位が、緑、8位が、水色、9位が、黄緑、となっている。
順位は、月一回送られて来る、食料の量できめられていた。なぜ、こんな制度ができたのかはわからない。
まるで、彼らを争わせたいかのようだった。

グループ6、すずらん隊隊長、本宮瞬は、3年前の事を思い出していたのを中断し、隊員、星野直樹からの通信に耳を傾けた。

「速い?何がだ。」

『足が…です。』

通信機からは、幼いが、声変わりした低い声が落ち着いた調子で聞こえる。
状況はよくわからなかったが、とりあえず、指揮官として命令を下しておく。

「…速くても負傷していても構わない。とりあえず、確保だ。……出来るな?」

『…はい。』



星野直樹は、若干13歳にして天才と呼ばれる程の狙撃手だった。
腕がいいと、10歳から最前線に出され、以来3年間も狙撃手をやっていた。心を凍りつかせ、ただ、冷静に敵の頭を貫き続けた。眼下で、敵に噛み砕かれる仲間を見下ろしながら。
だが、今はなぜか仲間のはずの、人間を狙撃用のスコープで捉えていた。
(…何なんだ、あの女は…)
今まさに、スコープで捉えている16歳とおぼしき少女は、先ほどまで、怪我をしているのにもかかわらず、恐ろしい程の脚力で夜の草原を走っていた。だが今は疲れたのか、大きな大樹に寄りかかり、辺りを警戒していた。
(…とりあえず、今は任務を完了させるだけだ。)
自分に言い聞かせ、意識を集中させる。それと同時に、トリガーにてをかけた。今、この銃には麻酔弾を装填させてある。当たっても、死にはしない。
少女は、こちらには全く気づいていない。
照準を合わせ、静かにトリガーを引いた。
刹那、パアァンと乾いた音が夜の草原に鳴り響いた。
当たったな、と思った瞬間、一瞬少女が、こちらを見た、
ーーーーーーーーーー気がした。

「……隊長、女を捕獲しました。」

通信機から、隊長の顔と同様、幼さが残った低い声が聞こえた。

『…分かった。そのまま、基地へ運んでくれ。……一人で平気か?』

「…大丈夫です。女くらい、一人で平気ですよ、馬鹿にしないで下さい。」

通信機の奥から、笑い声が聞こえた。

『そうか。…無事に戻って来いよ』

「はい。」

そこで、通信はきれた。
小説本編2
2023年11月29日

「……もう、3年も経つのか。」

静かな古びた、寒い部屋で少年はそう呟いた。痩せてはいるが、しっかりとした体格からして、歳は17歳前後という所だろう。だが、顔はやや幼く、どうにも年齢を感じさせぬ少年だった。
少年の視線の先はヒビが入った窓ガラスの先へと向けられている。
窓ガラスの先には、古びた廃病院が今にも倒れそうな風貌で建っていた。だが、辺りは暗闇で、ろくに見えはしない。
そんな暗闇でも彼には確かに見えていた。3年も夜行性の獣のような生活をしていたら、嫌でもそうなるだろう。証拠に、あの廃病院のすぐ隣にそびえ立つ、元はマンションだったであろう建物に、彼の部下でもある仲間を監視役として配置している。こんな、暗闇でもよく眼が効くためだ。何の監視かと言うと、あの廃病院にモンスターをいれないためのものだ。
あそこは、研究員がこの世界の謎を解くために住み着いている、研究所だ。研究員とは、23歳から26歳の人達の事を言う。その、研究員をモンスターから守るために、彼らは日々、戦っていた。


3年前、20歳から23歳の人達は東京に少年少女達を集め、13歳以上の彼女、彼らを何人かに分け、グループに分け始めた。グループには、パンジー、コスモス、と言ったグループ名が与えられた。困惑している少年少女達の前で、彼らは言った。

ーー「モンスター達と戦え」とー

実際は、もう少し言葉を和らげていたが、ようはそういうことだ。
自分達は、謎を解くために研究するからお前達は、(研究所を守るために)戦ってくれ、と。
当然、少年少女達は反論した。だが、高度な研究は彼らしか出来ないし、誰かがやれなければならないと言う、正当めいた理由で押し返された。
12歳以下の子供達は各グループに分け与えられた基地の、地下シェルターで生活せよ、とのことだった。ようは、13歳以上の者達が戦わなければ、12歳以下の子供達は死ぬ、と言う警告だった。しかも、食料は20歳以上の人達が管理し、モンスターの討伐数によって、量が違った。
わずか、10代の少年少女達には辛いことだったが、今思うと、そうならざるおえなかったのではないだろうか。必ず誰かがやれなければならないことだったのだ。それが、ただ、歳が違っただけなのだ、と。


『隊長、研究所から…女が出て来ました。16歳くらいの女です。……どうしますか?』

もの思いにふけっていると、耳に付けた通信機からそんな声が聞こえた。

「……女だと?10代の…?」

『…はい。』

研究所は、基本10代の者は立ち入り禁止なので、16歳の女が出て来ることはない。
(その女は何者だ…?)

「一応、話し聞こう。…確保だ。」

と言うと、通信機からは少し戸惑った様な声が聞こえた。

『それが、…負傷しているようですが、ものすごく速いんですけど……』
小説本編1

大人がいなくなってから、3日。
私達が住んでいた場所は、大いに荒れた。
食料は、その辺のスーパーから取って来た。ライフラインは何一つ途絶えはしなかった。だから、なぜ大人が消えたのか以外は何も、問題はなかった、はずなのに。
人類誰一人も予想など出来ない事が起こった、起こってしまった。ましてやこんな、子供しか、少年少女達しかいない世界で。

「……何、これ。…」

そう、細い声で発したのはわずか7歳とみえる幼い少女だった。
大きな目を更に大きく見開き、立ち尽くしている彼女の目の前には蜂がいた。ただ、大きさが尋常ではない、少女より大きな蜂が。

なぜ、そんな《モンスター》が現れたのかはまるでわからない。ただ、これだけは言えた。大人達が消えたのと、モンスターが現れたのは必ず、関係性がある。


大人がいなくなってから一週間、モンスターが現れてから4日目。
モンスターは蜂だけでなく、犬、猫といった獣型も現れた。デカいだけでなく、より、凶暴化し、なかには生き物と生き物が混ざった合成獣までもが現れた。
当然、モンスター達は人間を襲った。凶暴なモンスターに少年少女達はなす術もなく、殺された。街もだんだん死んでいった。この頃の少年少女達の精神状態は、ほぼ壊れかけていた。
このままではいけないと、ついに大人がいなくなってから一週間、動きだしたのが、20歳から23歳の成人を迎えた大人とも言える人達だった。
このころ、不思議だったのが、なぜ、23歳は消えていないのかだった。それ以外の大人は消えてしまったのに対して、20歳から23歳の人達は消えてはいなかった。これは後から推測したものだが、恐らく、モスキート音だと思われた。モスキート音とは、大人には聞こえない高音なのだが、微妙な個人差があるため、大人でもある程度の若さなら聞こえる人もいるのだと言う。
このモスキート音をなんらかの方法で使い、この世界を造ったのではないか、と考えたが実際のところ、よくわかっていない。
そして、その20歳から23歳の人達がラジオ、テレビなどで日本中に呼びかけた。
生き残っている人がいれば、日本の都心、東京へ来てくれ、と。
その呼びかけは、少年少女達にちょっとした希望をもたらした。生き残れるかもしれない、と言う希望。