高齢者の食欲低下。その原因と予防法について

高齢者の食欲低下。その原因と予防法について1

 

「のどがつまって食べにくいときがある」「食事中にむせやすくなった」など、加齢とともに食が細くなり、食べることを負担に感じてしまう高齢者の方は少なくありません。
食事を抜くようになったり、同じものを食べ続けたり、食への関心が薄れ食生活が乱れると、健康維持に必要な栄養素が不足しがちになります。
とくに高齢者の食欲低下は見過ごせない問題です。
そこで今回は、高齢者の方々がすこやかな毎日を送るうえで知っておきたい、食欲低下の原因とその予防法についてご紹介します。

 

高齢者の食欲不振の理由は?

 

高齢者の食欲低下。その原因と予防法について2

 

高齢者の体にあらわれる変化を知ること


 

「食べたいと思わない」「食べるものが偏る」などの状態が続くと、健康を維持するうえで必要な栄養素やエネルギーを摂れなくなり、低栄養状態に陥る危険があります。
低栄養状態を引き起こす高齢者の食欲不振は、多くの場合、身体機能や脳機能の低下に原因があるといわれています。
若い頃に比べて運動量が落ち、筋肉量や基礎代謝が低下すると、空腹を感じにくくなってしまいがちです。
まずは食欲不振につながる体の変化と、主な原因について考えてみましょう。

 

食欲不振につながる体の変化


 

以下のような体の変化があると、食欲不振につながることがあります。
心当たりがあるかどうか、チェックしてみましょう。
・半年前に比べて硬い物が食べにくくなった
・食べ物が口からこぼれる
・入れ歯が合わない
・歯茎が痛い
・飲み込んだあと、のどに残った感じがする
・口の渇きが気になるようになった
・お茶や汁物でむせることがある



食欲不振につながる主な原因


 

体を動かすさまざまな機能の低下が、主な原因になるケースがあります。
運動や活動が減ってくると、エネルギーの必要量も減り、どうも食欲が湧かないということになりがちです。
また、味や香りを感じにくくなること、視力の低下、内蔵機能の低下、かむ力や飲み込む力が衰えて嚥下障害を起こしていると、食欲に影響します。
お口の中の環境が悪化すると、食べにくさにつながることもあります。入れ歯が合わなかったり、唾液の分泌が減ったり、口内炎や歯周病の不快感も、食事のストレスになることがあります。
その他、認知症が原因になる場合や、家族など親しい人を亡くしたことによる心の問題も、食欲の低下につながることがあります。

 

食欲が低下すると、どんなリスクがある?

 

食欲低下が引き起こす「低栄養状態」に気をつけて


 

食欲が落ちると健康を維持するうえで必要な栄養素やエネルギーが十分に摂れなくなり、低栄養状態になる危険があります。
低栄養状態になると筋肉量が減少していきます。
また、きちんと食事をして健康体であっても、加齢とともに筋肉量や骨量は減少していきます。
筋肉量が減少すると転倒しやすくなり、骨量が減少すると骨折の危険性が高まります。
さらに、食事を通して摂取していた水分も不足することで、脱水症状を起こしやすくなります。
また、炭水化物の不足による低血糖は、めまいや吐き気、集中力の低下を引き起こすこともあります。
糖尿病の治療のためにインスリンの投与で血糖値を下げている方は、低血糖には気をつけなければいけません。
このような栄養不足の状態が続くと、免疫機能が低下し風邪などの感染症を引き起こしやすくなります。
認知機能の低下やケガが治りにくいなどの状況がいくつも重なると、寝たきり状態になってしまう危険性もあります。
「最近、食が細くなった」と感じたら、そうした状況がいつからなのか、体調を確認してかかりつけ医などの医療機関に相談してみましょう。
食欲低下の原因となる病気になっていないか、原因を知るためにも医療機関で検査を受けることが大切です。

 

美味しく食べてもらうためには

 

高齢者の食欲低下。その原因と予防法について3

 

食べやすいものを、食べたいときに


 

咀嚼の能力が低下している場合は、「やわらかさ」を重視します。また飲み込みにくさを感じているようなら、「口の中でのまとまりやすさ」「とろみ」を重視しましょう。
たとえば茹で卵の黄身だけを口に入れると、パサパサとして口の中でまとまりにくく、口の中にいつまでも残ったり、むせやすいなどの危険があります。
たとえば白身といっしょに刻んでマヨネーズであえた卵サラダにすると食べやすくなります。
なかなか食欲が湧かない場合は、片手でつまめる海苔巻きや稲荷寿司、サンドイッチなどを用意しておき、いつでも食べられる分だけ食べてもらうのもひとつの方法です。
本人が食べたいと思ったそのときが、食事のタイミングだと、ゆるやかに考えてもいいのではないでしょうか。
また、食欲が落ちているときは水分が不足しがちになります。スープや味噌汁などの汁物を食事に添えるとよいでしょう。
味噌汁でむせてしまう場合は、なめこ汁にする、とろろ昆布、岩のり、すりおろした長芋などを加えると手軽にとろみがつけられます。



食事の時間が、楽しい時間であるために


 

食欲がないときにも、料理が美味しそうに見えることで、食べたい気持ちが湧くことがあります。旬の食材を使った料理なら、会話も弾みます。
楽しく食べきれるよう、料理を少なめに盛りつけ、品数を増やすのも効果的です。
高齢者の方も好物が登場すると、食事は楽しくなるはずです。
ときには栄養バランスを気にせず、好きなものを食べてもらうことも大切です。
また、ひとりではなく誰かといっしょに食べることで、食事はいっそう美味しく感じてもらえるはずです。
現在は、新型コロナウイルスの感染拡大防止などの影響で会話を楽しみながらの食事がしにくい状況ではありますが、適切な距離を保ち、換気を徹底するなど、十分な対策をしたうえで食事を楽しんでいただく環境を整えましょう。

 

まとめ

 

高齢者の気持ちに寄り添い、やさしく見守って


 

高齢の家族の食欲不振を心配して、「少しだけでも食べて」と無理に食べさせようとするのは逆効果です。
楽しむための食事が強要されるものになり、ストレスや不安を感じるようになってしまいます。
余計なプレッシャーや負担を感じることなく、心から食事を楽しめるように見守ることも大切です。
そのためにも、まずは高齢者の食欲低下について理解し、食事の様子をよく観察しましょう。
食欲低下の症状があらわれたらすぐにかかりつけ医などの医療機関に相談することをおすすめします。
まずは、食べたくても食べられない高齢者の気持ちに寄り添うことから、はじめましょう。




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