Ken です。
横山剣のアニキ。
歌声に聞き惚れ、俺、親からもらった名前の次をあやかり受けたんだ。
それと、港のメリー(マリア)。
伝説の娼婦。
俺となら、Ken とメリーだ。
ケンメリな。
びっくり返せば、メリケン粉だ。
わかるヤツに、わかってもらえりゃ、
それでいい。

こんなこともあった。
俺が、会員登録していた出会いサイト上のハンドルネームを替えて間もなく、人気の投稿コーナーの場での立ち振舞いを大きく方針転換することにした。
なぜなら、半月やってても1件も女子側からの誘いである「いいね」が来ないし、いわんやマッチングは到底おぼつかない有り様だった。
考えてみれば、山登りでどこ行っただの、今ひとりで家飲みしてます………なんて記事載せたところで、女にはモテない。
一計を案じ、軟派路線に舵をきった。
俺らには懐かしい、バブル時代の象徴わたせ画伯のソフトタッチなイラストをベースに、歯の浮くような甘い語り口のショートエッセイを連発してみた。
効果はすぐに表れた。
スマイル数が一気に増え、たちまち「いいね」からマッチングへと雪崩が起きた。
モテたよ、あの時は……………
で、だ。
ここからが本題。
湘南在住のイカす感じの熟女から誘いを受けた。
藤沢の海が見渡せる、とあるINN で俺たちは待ち合わせた。
真夏の盛りだったが、陽も落ちれば潮風もなびき、かなりイイ感じになる。
サザンからムーディーなハワイアンにBGM が代わる。
やって来たリアルの彼女は、割合濃い目の化粧だった。
が、かえって湘南らしくてイイや、と気にしなかった。
いきなり、立て続けにビールを数坏あおらされた。
そして浴びせかけるように、俺が投稿するソネットをやたらベタ誉めしてきた。
悪い気はしない。
まんざらでもなく、詩作のモチーフをもっともらしくしゃべり、果ては読みかじりの朔太郎を俺は謳ってみせた。
彼女が、俺に指を絡め出した。
俺は夢物語の中にいるようだった。
もう成り行き任せだ、そう決めた。
彼女が突然俺に覆い被さってきた。
その時だ。
直ぐに気がついた。
彼女は、実は…………彼、だった。
そこからは、トランスジェンダーである彼女の独り語りが夜明けまで続いたんだ。
俺は、悪いが何の感慨もなかった。
ただ一刻も早く、この状況から脱出する事だけを考え、相手にあわせた気持ちの空っぽな相づちを打ち続けた。
そして、その後のことは
まあ、言わぬが花としておこう。
彼女とは、二度と連絡を取ることはなかった。