確かに「稀だ」と言われるよりも「太った郵便配達は珍しい」と言われたほうが。
作家の村上春樹の文章の比喩表現のこだわりを例に出し氏の文章を紹介していた。
村上氏はチャンドラーの比喩に「私にとって眠れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい」というのがあると断って、こう続けています。
これは何度も言っていることだけど、もし「私にとって眠れない夜は稀である」だと、読者はとくに何も感じないですよね。普通にすっと読み飛ばしてしまう。でも「私にとって眠れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい」というと、「へぇ!」って思うじゃないですか。「そういえば太った郵便配達って見かけたことないよな」みたいに。それが生きた文章なんです。そこに反応が生まれる。動きが生まれる。
確かに「稀だ」と言われるよりも「太った郵便配達は珍しい」と言われたほうがなになにと読んでる文章に引き込まされる。
でも逆に今度は太った郵便配達が印象に残りすぎてしまって読んでる本の内容が頭に入らなくなってしまう危険がある。
そうすると比喩もほどほど位が丁度いいし、そのバランスが難しい。