「櫻華は・・櫻華はきっと・・甘える事が下手なんだよ・・ふふっ」
「甘えベタ?」
「うん・・頼ったり甘えたりを氷華を許してこなかったし、僕は何も口を挟ませてはもらえなかった・・・まあ、僕は口を挟める様な事はしてこなかったからかな・・でも、僕は氷華に気持ちがなくなってしまったからではないんだよ。僕は僕で、裕也のママも本当に愛しているんだ・・ふふっでも今の翔君にこういう事を話すのは櫻華に怒られちゃうかな・・」
「あははっいえ・・大丈夫です。」
「ハハッそうだね。翔君にはこういう事は無関係だね」
翔はゆっくりと話し、ゆっくりとフォークを口に入れる響一の姿に余裕を感じていた
「翔君、櫻華は・・。櫻華は翔君にとってハッピーを連れて来てくれているかな?ふふふっ」
「も、もちろんです!僕は、僕は櫻華がいないともう、生きてはいけないんですッ!」
翔は力み思わずナイフとフォークをテーブルに強く置いてしまった
「アッハッハッハッ!生きていけないだなんて大袈裟だなぁ」
「いや、本当の事です!」
「アハハハッ!翔君、ありがとう。」
「いえ・・本当の事だから・・」
「僕はね、櫻華にはたくさんの人に愛されて生きていってほしいんだ。たくさんの人に愛されてたくさんの人を愛して生きて欲しいってずうっと想ってるんだ・・」
「櫻華は・・櫻華はたくさんの人に愛されています。そしてたくさんの人を愛している。僕はそう想ってみています。きっと僕が出逢う前から櫻華はそうだったんだと想います。」
「そうか・・・」
微笑む響一はゆっくりとワインを口にする
「でも、今は僕のモノだけでいてほしい・・なんても想ってるんです・・」
「ふふふっ。そうだね。櫻華もきっとそう想ってる」
「そうですかね・・」
「ん?」
「時々ふとそう想う時があって・・」
「ハハッ」
「恥ずかしいですけど・・」
翔は焦ってグラスを口にした
「櫻華はよそ見は絶対しないよ」
響一は翔を真っ直ぐ見て言い切った
「櫻華はよそ見なんてしないよ。君だけを見ている。ただ・・」
「ただ?」
「ただ、櫻華は気を遣い屋さんだから、きっと君を心配してるんだと思う。」
「心配?」
「ああ。きっと君の事を想い過ぎてどうしよう、重すぎるのかな?想い過ぎてるのかな?なんて想って・・。」
「・・」
「想い過ぎなんてないのに・・櫻華は遠慮してしまうんだろうな・・。氷華の顔色ばかり見て生きてきたトコがあるから・・期待して裏切られたら・・・なんても想ったり。不器用なんだよ。櫻華」
「ふふ、なんだかわかります・・・。でも人の顔色はよく見ている人だと想います」
「・・・すまないな・・」
「いえ。そんな・・」
「僕がしっかりしてないばっかりに・・」
「いえいえ、そんな事ないです。響一さんは立派な方だと想います」
「いや、僕がしっかりしてないから氷華も櫻華も哀しませてる事たくさんあるんだよ・・」
「僕だって。僕だって櫻華の事泣かせたりもしたし、哀しませる事してしまいました。でも、でもこれからはそんな事絶対しないって誓ったんです。櫻華は、響一さんの愛情も、氷華さんの愛情も、それからじいちゃんやばあちゃんや周りの人達の愛情をたくさん感じて生きてるから、僕にもたくさん与えてくれます。それに応えたいし、僕もそうしたいって思ってます。だから、だからどうか、僕達を見守って欲しいんです。」
「もちろんだよ」
「それから、氷華さんにも・・・」
「ああ・・そうだな・・僕からももちろん話すよ。」
「ありがとうございます」
翔は目をキラキラと輝かせ、響一とのランチを楽しんだ
「櫻華・・大丈夫?」
「あ、カズちゃん・・うん。大丈夫」
「二人共お昼寝タイムよ」
「ふふ。気持ち良さそう」
「まったく勝手なモンよ」
「ふふふ。いつもの事だね」
「アンタ、体大丈夫なの?」
「うん。大丈夫」
カズは櫻華の隣に座りやっとビールを口にした
「櫻華、改めておめでとう」
「・・・ありがとうカズちゃん・・」
「まさか薬止めてたなんて・・」
「ふふ。もう会えないって想ってたから・・」
「そんな不安定な状態でも創られたって何だか運命感じちゃうわ・・」
「ふふふ」
「だって、頑張っても上手くいかない人だってたくさんいるじゃない?それなのに二人の間にできたってやっぱり素敵な事よね」
「うん・・ありがたいなって想ってる・・」
カズが見る櫻華の横顔は落ち着いていて、柔らかな微笑みを含んでいた
「ねえ、櫻華?」
「ん?」
「櫻華はバンビの奥さんになるの?」
「ふふっカズちゃん・・」
「だって、バンビ結婚してなかったんだし・・」
「さっきもみんな言ってたけどそんな簡単な事じゃないでしょ・・」
「でも櫻華の気持ちはどうなの?正直に言ってみなさいよ」
カズは隣の櫻華の腕をツンツンと突いた
「今アタシと二人だけ。いつもの二人のナイショの話しましょ?」
カズは慌ててミルクティを淹れに立ち上がった