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『胸の鼓動』和Side~
「楓、そっちに行ってもいい?」
俺はドキドキしながら楓に問いかけた。
「やだ…」
楓の答えが思ってもみないもので俺は拍子抜けした。
「なんで?」
「ダメ、私がそっちに行くから。」
「んー・・・俺から行くからダメ。」
「やだ…」
「楓、俺から行く。ずっと待たせてたんだ。だから…」
そう言って俺は楓の方へとそっと向かった。
薄暗い中で恥ずかしそうにしている楓の姿が見える。
そっと布団に入ると楓の足がものすごく冷たかった。
「ずっと待たせてごめん。」
「うん…」
俺はそっと楓を胸に抱き寄せた。
「おまえ、足冷たいのな…」
「…緊張してたのかも…」
「俺も…」
「カズくんの心臓の音が聞こえる。ドキドキしてる?」
「ふふ、聞かれると恥ずかしいな…」
俺は胸の鼓動を聞かれるのが恥ずかしくて楓を自分の胸から離すとそっと唇に自分の唇を重ねた。
唇を離すと「好きだったんだ。ずっと。」そう言った。
「やっと聞けた…カズくんの気持ち。」
「うん…楓の手紙、何度も読んだんだ。遠回りしすぎたんだ、俺たち。」
「うん…」
その時、楓の頬が濡れているのに気付いた。
「楓?」
俺は楓の頬をそっと撫でて涙を拭ってあげた。
「本当に…待たせてごめん。」
「…もうずっと待ってた。カズくんだけを…」
「もっと早く…こうしてれば良かったな。」
それから俺たちはひとつになった。
やっと気持ちが繋がったんだ。
何度も楓にキスをして、そしてすべてを愛したんだ。
楓、
俺も楓だけを想ってきたんだ。
君と歩く未来を。
ずっとずっと楓と歩いてくれば良かった。
でも、これからはずっと二人で歩いていける。
隣で笑っている楓を毎日見ていたい。
これからも。
ずっと。
俺は隣にいる楓を優しくそして強く抱きしめた。
続く