君と歩く未来を67 『嘘の理由。』和Side~ | ニノのこと♡少し韓国♡妄想小説♡日々の出来事を綴ったブログ

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『嘘の理由。』和Side~




楓から電話が来たのはそれから1週間あとだった。


紗栄子ちゃんと最後に会った…

あの日から1週間。

あの時、部屋に帰ると紗栄子ちゃんの姿はなかった。

電話で言っていたように俺が部屋に戻れるように帰ったみたいだ。

あれから連絡もしていないし会ってもいない。


楓とも連絡を取る気になれず、翔ちゃんには楓と幸せになって欲しいと言われてたのに。


どうしていいのか分からなくなっていた時、楓から電話が来たんだ。


出ようか一瞬迷って電話に出た。



―はい。


―カズくん?


―うん。


―近いうちに会える?


―…うん、いつ?


―今週末いいかな?


―いいよ。


楓と会う約束をして電話を切った。


どうしよう。

やっぱり会うのはやめたほうがよかったかな。

どんな顔して楓に会えばいいんだろうか?


週末が近付いてくるにつれ緊張が高まった。


楓に会うのにこんなに緊張するなんてな(笑)


そして、週末。


お昼を済ませると約束の場所まで出掛けた。


俺が行くと楓はすでに来ていた。


カフェの隅っこの席に座ってスマホを見ていた。



「楓?」


「あ、カズくん。」


「ごめん、遅かったかな?」


「ううん、私が早く来すぎちゃったの。」


「そっか。」


俺も席に着いてコーヒーを注文した。


「カズくん。」


「ん?」


「今日会ってもらったのはね。」


「うん。」

俺は楓に何を言われるのか察しがついた。
そして、断る理由を考えていた…。



「私、カズくんと一緒にいたいの。あの時カズくんに好きだって言った気持ちのまま。まだずっと…だから…」

楓はそこまで言うと顔を赤くして下を向いた。


「楓…?」


「なに?」

楓は俺の方に顔をそっと向けた。


「俺…楓のこと好きだよ。」


「本当に?」
不安そうな楓の顔が明るくなった。でもそれは一瞬だけだった。
俺が続けたその言葉に悲しそうな笑みを浮かべたんだ。


「でも…楓とはずっと一緒にいられない。会うのも今日が最後。」


「…好きって言うのは友達としての好き…ってこと?」


「ごめん。」


「ううん。今回はフラれない自信あったんだけどな…(笑)」

楓が泣きたいのを我慢しているのが分かった。

ムリして笑顔を作って俺を見ている。


紗栄子ちゃんとあんなことになって…

楓と付き合うなんて…出来ない。


本当はずっと一緒にいたかった。

フルのだって…辛いんだよ、楓。

ごめん。

「カズくん、でも、なんで?会うのも最後って」


「うん…仕事もさ、これから忙しくなるし。もしかしたら勤務地…変わるかもしれない。だから会うのも最後かなって。」

俺はその場で取り繕った言い訳をして楓を納得させた。


「そうなんだ。東京から離れるの?」


「…たぶん…ね…」

俺が小さく頷くと楓はものすごく寂しそうな顔をした。

嘘を付いてるのが苦しかった。

本当はちゃんと楓を抱きしめてずっと一緒にいようって…そう言いたかった。


二人はコーヒーを飲み終わると店を出た。



「あ、雨…」楓が空を見上げてそう言った。


「本当だ。」俺も空を見上げた。


「傘、持ってる?」


「いや…」


すると楓がカバンから小さな折りたたみ傘を出した。


「これ、使って。」楓が俺に傘を差し出した。


「えっ?そしたら楓が濡れちゃうよ?」


「いいの。私、もう一本折りたたみ傘持ってるから。」


「嘘…だろ?」


「本当だよ!」


「じゃあ、もう一本見せて?」


楓は一瞬困った顔をした。


「ごめん。嘘…」


「やっぱり(笑)」


「なんか、カズくんには嘘は付けないや…」






楓のことは、だいたい分かる。

分かるんだ。

ずっと一緒にいたんだ。

もうずっと…


俺たちは長く一緒にいすぎたのかもしれないな。




楓と別れてから部屋に戻るとなんだか急に悲しくなった。


もう、楓とは会わないと決めたんだ。


もう二度と…



続く