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『光の魔法』翔Side~
楓は自分でそう言っておいて、ちょっと慌てていた。
「あ、ごめん。私 なに言ってるんだろ…」
「………」
俺はなんて答えていいのか分からずに一瞬黙ってしまった。
「翔くん?」
「あ、うん。」
「大丈夫?」
「ごめん、楓があまりにも唐突にそんなこと言うから。」
「翔くんが、言ったんだよ?カズと幸せになれって。楓のこと好きだと思うって。」
「あぁ、そっか。そうだよな。」
「ふふふ」
楓は俺を見て小さく笑った。
「えっ?なに?」
「今日の翔くん、ちょっと可笑しいよ?(笑)」
「あはは、そう?ごめん。」
「ううん。今日は誘ってくれてありがと。翔くん。」
「うん。」
俺たちはもう一杯コーヒーを飲んでありきたりな話しをしてコーヒーショップを出た。
「楓、まだ時間ある?」
「うん、まだ大丈夫だけど…」
「じゃあ、せっかくだしさ…」
「ん?せっかくだし?」
楓がちょっと不思議そうな顔をした。
「昨日からイルミネーションをやってるところがあるんだ。行かない?」
「あー、イルミネーションかぁ。もうそんな時期なんだね。」
「うん。向こうの通りでさ。そろそろ点灯する頃だと思うんだ。」
楓は一瞬迷ったのか下を向いて黙っていた。
しばらくして顔をあげて「いいよ。」と微笑んだ。
夕方になると途端に寒くなる。
楓は上着のポケットに手を入れて「風が冷たいね」と言った。
二人でしばらく歩くとイルミネーションがある通りへと着いた。
「まだみたいだね。」
楓が俺を見た。
「ごめん、ちょっと早かった」
「もう少し待つ?」
楓が俺の顔を覗き込む。
ちょっとドキっとした。
やっぱり好きだと言う気持ちが出てきてしまう。
「やっぱり帰ろっか?」
このまま二人でイルミネーションなんて見たら自分の気持ちが我慢出来なくなりそうだ。
周りにいるカップルが気になった。
手を繋いで仲良く歩く姿やイルミネーションが点灯するのを待っているらしきカップルもいた。
「帰るの?ここまで来て?」
「なんか、場違いだったかなってさ。カップルばっかだし(笑)」
「ふふ、そんなこと気にしてるの?」
「だって、俺たちは友達だろ?」
「いいじゃん。もうずっと友達やってきたんだし。友達同士でイルミネーション見ちゃいけないなんてことはないでしょ?」
楓はそう言って笑った。
「まぁ、そうだけど…いいの?カズと来たかったんじゃない?」
「もう、翔くん?ここに来ようって言ったのは翔くんだよ?」
「ははは、そうだよな(笑)」
俺は結局何がしたいのか…
自分でも分からなくなっていた。
しばらく待つと綺麗な光りが辺り一面を包んだ。
「わぁ、綺麗。」
楓に光があたってキラキラと見えた。
こんな幻想的な光の中にいると楓に好きだと伝えたくなる…
光りの魔法。
そんなロマンチックなことを思った。
柄にもないか…(笑)
だけど…やっぱり
俺は隣にいる楓の手を思わず握った。
楓がびっくりして俺を見つめた。
続く