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紗栄子はゆっくりと目を覚ました。
えっと…
枕元にスマホがあるかと思って探ってみたがなかった。
少しずつ記憶が蘇ってきた。
そうだ…
二宮くんと私…
紗栄子はベッドから起き上がって服を着るとカバンに入っているスマホを取り出した。
4時半…
二宮くん、どこ行ったんだろうか…?
きっと後悔してる。
私となんて…
楓が好きだって、そう言ってたのに。
私が好きだなんて言って泣いたから、、
私と顔を合わせるのが気まずいのかもしれない。
私…バカだな。
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二宮はコンビニから出て一人歩いていた。
行くところもない。
それにこんなに朝早くからじゃ店もやっていないし。
何やってんだろ…
そう思っているとスマホが鳴った。
―はい。
―二宮くん?ごめんね。
紗栄子だった。
―なんで?謝るの?
―ごめん…
電話の向こうで泣いているのが二宮にもわかった。
―…なんで?泣くの?
泣きたいのは二宮だって同じだ。
―私、帰るから…もう帰って来て?
―…ん…ごめん…そういうわけじゃ…
―もう、好きだなんて言わないから…楓には黙ってるから…だから二宮くん戻って来ていいよ。
―……ごめん…俺…
―分かってるから。勘違いしたりしないから。大丈夫。私…そんなにバカじゃない…
紗栄子は話しながら涙が止まらなかった。
―紗栄子ちゃん…どうして泣くの?
二宮もまた頬から涙が伝った。
―寒いでしょ?外?帰って来て。私は帰るから大丈夫だよ?
―…ん…ごめん…
俺は電話を切ってからその場にしゃがみ込んだ。
彼女を傷付けて泣かせて…何やってんだ、本当に…
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紗栄子は机にそのままになっていた食器を片付けると上着を着てカバンを持つと外に出た。
思ったより寒かった。
寒ーっ!
玄関を出て急いで歩き出した。
私…楓にどんな顔して会えばいいんだろうか?
二宮くんと楓がずっと羨ましかった。
二宮くんの相談に乗ってる時だって、近くにいたのは楓より私だって。
そんなふうに思ったりもしていた。
ずっと好きだったんだ。
好きだって気持ちを隠してきたけど…
楓にだって、幸せになって欲しいなんて言っておいて。
ずっとずっと辛かった。
今になってどうしても…好きだって伝えたかった。
バカだな…私。
もう、二宮くんに会うのはやめよう。
楓にも、会えない。
紗栄子は早朝の空を見上げた。
寒いせいか空気は澄んでいた。
続く