20
次の日、みわもえりかも出勤するとすでに大野が来ていた。
「おはようございます。」
「あ、おはよ。」
えりかが挨拶するといつもと変わらない笑顔で大野も挨拶した。
「改めて、よろしくお願いします。」
えりかは深々頭を下げた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
と大野も頭を下げた。
お互い頭をあげると目が合ってなんだか笑ってしまった。
「大野店長、今日はパンは?」
「うん。すでにこれだけ焼いたんだ。」
「だと、思った。いい匂いが外までしてたの。」
えりかはパンを店の棚に並べた。
みわもそれを手伝いながらえりかに話し掛けた。
「あの、えりかさん?」
「なに?」
「二宮くんは?来るかな?」
みわは少し怖かった。
あんなことがあったあとだし。どんな顔して会えばいいのか。
逃げ出したかった。
「うん…来ると思うよ。みわ、大丈夫だよ!」
「私、ちょっと怖い。でも会いたい…」
「矛盾してるなー、みわは(笑)」
「あの、えりかさんは辛くないの?」
「うん…」
えりかは少し溜息をついた。
「やっぱり、ツラい?」
みわはえりかの顔を覗き込んだ。
「まぁ、ね。やっぱり好きだもん。まだ…」
「えりかさん…」
「でも、いいの。好きな人に毎日会えるし。」
「えりかさん、昨日はごめんなさい。」
みわは、頭を下げた。
「なぁに?今頃?(笑)」えりかはみわを横目で見た。
「すいません、なんかあの時は…。苛立っちゃって…」
「もういいよ。」えりかは微笑んだ。
そんな会話をしていると、二宮が店の入り口から顔を出した。
「あの…おはようございます…」
「あ、二宮くん。おはよ。」えりかはニコッと笑って挨拶した。
そして、みわを肘でつついた。
「ほら、挨拶。」
「あ、おはようございます…」
「…うん。おはよう。」二宮は軽く挨拶すると厨房へと入って行った。
「なんか、私は視界に入ってなかったみたい。」
「そんなことないよ。」
「私、好きな気持ちどうしたらいいかな。えりかさんは?ずっと好きでいられるの?」
「分かんない。いつか忘れられる…そう思ってるよ。」
「復活愛…みたいなのは期待しないの?」
「うふふ、うん。もういいかな。彼の気持ちはもう二宮くんにあるんだもん。仕方ないよ。」
えりかは厨房にいる二人を見つめた。
楽しそうに話してる二人を見てるのも悪くない。そう思った。
「やっぱり、えりかさん強いです。私は苦しくて仕方ないよ。」
「みわは、女の子らしいね。可愛いよ。弱いところちゃんと持ってる。私は…可愛くない。分かってるふりしてるだけ。」そう言ってえりかは微笑んだ。
えりかさんは、強いって思ってたけど、本当は弱くて脆いのかも。
でも…弱さを見せないところはやっぱり強い。
私は…いつまでも苦しくて。
二宮くんを見るのも辛いかもしれない。
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「大野さん、おはよう。」
「うん…おはよ。」
大野はなんだか昨日のことを思い出して恥ずかしくなって顔を見れなかった。
「大野さん、昨日いつ帰ったんですか?いつの間にかいなくて…」
「あぁ、うん。朝方ね。着替えもしたくて。」
「そっか。気付かなくて。起きたらいなくて。昨日のは夢だったんじゃないかって不安になった。」
「ごめん…」
「ううん。」
「それより、体調は?熱はもうすっかり大丈夫なんだよな?って今更だな…あんなこと…しといて…」
「あ、うん…」
二宮も改めてそう言われると恥ずかしくなった。
お互い、顔を見合わせてクスっと笑ってしまった。
その日、1日仕事をして、店を閉めてそれぞれ帰る頃、大野はえりかを呼び止めた。
「えりか…?」
店から出て帰ろうとしていた、えりかは大野の声に振り返った。
「なに?」
「ちょっといい?」
「うん。」
えりかはなんだろう?と思った。
続く