18
えりかは、みわのアパートを訪ねた。
ドアが開いてみわが顔を出した。
「みわ、大丈夫?何かあった?」
みわは、ドアの向こうにいるえりかを見ると抱きついて泣いた。
「えりかさん…うぅ…」
「みわ、どうしたの?」えりかは、みわの背中をトントンとしてさすった。
「私、大変なことしちゃった…もう、お店行けないかも…」
「なぁに?大変なことって?」
えりかは、みわの顔を覗き込んだ。
「………」
みわは、泣いているだけで話さなかった。
「とりあえず、部屋に入るよ?」
えりかは玄関で靴を脱ぐとみわのアパートへと入った。
改めて二人で向かいあって座ると「何があった?」とみわに問いかけた。
みわは、少し落ち着いたのか少しずつ話した。
「私、二宮くんに告白して…それで…」
「なに?」えりかは、みわの顔を覗き込んで聞いた。
「…キスしちゃった…自分から…」
「…そう、それで二宮くんは?」
「好きな人がいるし、私とは友達だからって。」
「好きな人ってやっぱり…?」
みわは首を横に振った。
「教えられないって言われた。それに正確には告白してない。私、好きだって言ってない。」
「ちょっと待って、じゃあ、どうしてキス?」
「なんか、気持ち抑えられなくて…我慢出来なかった。だから衝動的に。」
「そっか…」
「えりかさん、どうしよう?私もう会えない…」
「大丈夫だよ。」
えりかはみわに笑顔を見せた。
「でも…」
「私ね、智くんと別れたの。」
笑顔でそう話すえりかを見てみわは驚いた。
「なんで、笑ってるの?えりかさん、ツラいんじゃないの?」
「もういいの。だって智くんの好きな人は私じゃないんだもん。」
「じゃあ、お店は?辞めちゃうの?」
「まさか、辞めないよ。このままずっと智くんと一緒にお店はやっていく。」
「えりかさん、強いね。私、やっぱり無理だよ。辞めたい。」
「ダ~メ!今日ね、二宮くんも休んでたの。」
「そうなんだ。」
「だから辞めないで。二宮くんにもちゃんと来てもらうし。」
「でも。二宮くんには嫌われたかもしれないし…えりかさんみたいに強くないよ、私…」
「私、強くないよ。泣いたもん。ツラいよ?でも、好きな人の側で働けるんだし。私、智くんを二宮くんの所へ行かせたの。」
「えっ?どうして?」
「もう、いいんだ。好きな人が好きな人と幸せになるんだったらいいかなって。相手が男でもさ。私はもう受け入れた。」
笑顔でそう話すえりかにみわはイラだった。
「えりかさん、そんな事言ってるけど、ツラいんじゃないの?それに相手が男の子なんておかしい。私は本当に好きだし振り向いて欲しかった。どうして受け入れられるの?」
「そうだよね。普通は受け入れられないよね…(笑)ごめん、みわ。お店に来るのも来ないのも私が決めることじゃない。」
みわは、また泣いていた。
「私、帰るね。」えりかがそう言って立ち上がるとみわは黙ったまま下を向いて泣いていた。
えりかが玄関から出るとみわは急いで玄関まで行ってドアを開けようとしたが、やめた。
「えりかさんみたいに強くなれないよ。」
もう、どうしていいか分かんない。
みわは部屋に戻るとベッドに横になった。
二宮くん…
好きなのに。
やっぱり会いたい。
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「大野さん?オレも同じ気持ちだよ。」
そう言った。
「本当に?」大野は抱きしめている体を離して二宮の顔を見た。
何だか見つめ合うと恥ずかくなった。
「んふふ。」思わず二宮は笑ってしまった。
それに釣られて大野も「ふふ」と笑ってしまった。
「好きって言っても驚かないんだな?俺は友達として好きって言ってるんじゃないんだぞ?」
「分かってますよ?」
そう言って二宮は笑った。
「そうか。分かってるなら良かった。」
大野はなんだか急に恥ずかしくなり二宮から離れた。
「大野さん、えりかちゃんと別れたのはオレのせい?」
「まぁ、そうだけど、カズのせいではないよ。別れようって言ったのは向こうなんだ。俺の気持ちにはとっくに気付いてたみたいで…」
「そうなんだ。」
「うん。」
「大野さん?」
「ん?」
「隣に行ってもいい?」
「えっ?」
「ダメなの?オレ、本当に好きだよ。大野さんのこと。」
はっきりとストレートに言ってくるカズに何だか恥ずかしくて変な気持ちになった。
「カズ?電気消していい?」
「…いいけど…」
顔がはっきり見えると恥ずかしい。
大野は電気を消して二宮の側に行った。
「本当に…いいの?」
大野が聞くと二宮は小さく頷いた。
抱きしめてそっと髪を触る。
そのまま手で頬を包んで唇を触った。
男の子と…なんて初めてでよく分からないままに唇を近づけた。
その時二宮が「オレ、初めてじゃないよ。男の人と…」と言った。
「えっ?カズ?」
二宮の頬から涙が伝っているのが分かった。
頬を包んでいる大野の手に生暖かいに涙が触れた。
続く