その手に触れて、永遠に。6
大野は、いつもより少し早く店に来ていた。
すると、店に誰か入ってきた。
「おはようございます!」
「おっ、二宮くんおはよう。早いね。」
「あ、早すぎました?」
「いや…いいよ。せっかくだしここ手伝ってくれる?」
「はい。」
しばらく二人は黙って仕事をしていたが二宮は気になっていた事を大野に聞いてみた。
「あの…店長は…」
「その、店長ってやめてくれる?慣れなくてさ(笑)」
「じゃあ、大野さん?」
「うん。まぁそれでいいや。で?なに?」
「大野さんは…彼女とかいるのかなって。」
「えっ?」
「あ、いや…えりかちゃんと仲良いし、その…」
二宮はモソモソとしながら大野を見た。
「んー、えりかちゃんね。ダメだよ、手出しちゃ。」
「へっ?」
「えっ?あ、違うの?えりかちゃんの事聞くから。てっきり。」
「てっきり?」
「あ、えりかちゃん、なんてもうそんな呼び方してるの?あ!でも同じ年か…まぁ、とにかく。手出しちゃダメだよ。一応ね…俺のだから。」
大野は二宮にちょっとキツイ口調で言った。
「俺の…?って。やっぱり付き合ってるんですか?」
「あ、ヤベっ。言わない約束だった。黙っててね。」
「秘密なんですか?」
二宮は大野の顔を覗き込んでちょっとニヤっとした。
「ん、まぁ。秘密って言うか…。」
「へぇー。そうなんだ。」
「そんな事より、仕事!仕事して!」
「はい。」
二宮はえりかと大野が恋人だと聞いてちょっとだけ胸がキュッとなった。
「あの、大野さん。」
「なに?」
「えりかさんのどこが好きなんですか?」
二宮は手を動かしながら聞いた。
「なんで?そんな事聞くの?」
「いや、ちょっと気になって。」
その時ちょうど、えりかとみわが出勤して来た。
み「おはようございます。」
え「あれ?二人とも早かったんだね。」
二「まぁ。今日は早く目が覚めちゃって。」
み「そっか。ねぇ、二宮くん今日の夜、仕事終わってから時間ある?」
二「えっ?特に夜は予定ないけど。」
え「なになに?みわと二宮くん、デート?」
み「違う、違う(笑)今日ね、合コンあって。メンバーがいないの。二宮くんもどうかなって。」
え「男子メンバーが足りないの?」
み「うん。向こうのメンバーが急に1人来れなくなったって昨日連絡があって。だからどうかなって。」
二「合コン…いや、オレはいいや。」
二宮はちょっと困ったような顔をした。
え「えー、二宮くん、合コン。興味ないの?」
二「あんまり…」
み「そっか、二宮くん好きな人いるもんね。」
え「えっ?そうなの?」
二「いない、いない!いないよ!」
二宮は慌てて否定した。
み「あ、そっか秘密か!」
二「ちょっと、みわちゃん!」
二宮はみわを見た。
大「なに?二宮くんに好きな子?」
み「ごめん、なんでもないです。」
みわは二宮を見て、口パクで『ごめん』と言った。
え「なーんだ。みわの勘違いか(笑)」
み「二宮くん、本当に合コン行かないの?興味なし?」
二「まぁ。特に…」
み「そっかぁ、残念。」
大「お喋りはそこまで。はい!仕事ね!」
三人はいつも通りの分担で仕事を始めた。
あっという間に時間が過ぎ店も閉店時間になった。
み「お疲れ様でした。」
え「今日もたくさん売れたね。ねっ、大野店長。」
大「うん。今日も売り上げ目標達成だよ。」
二「えりかちゃんなら、店長って呼ばれても何も言わないんですね?」
大「えっ?あぁ、まぁ。」
二「ふーん。オレだと嫌がるのに?」
二宮はちょっと不機嫌な顔をした。
え「どういう事?」
二「オレが言ったらイヤだって。」
え「でも、私も何度もその呼び方は嫌だって。言われたけど?」
二「そっか…。ねぇ、えりかちゃん?」
二宮がえりかの名前を呼ぶと大野はちょっと嫌な顔をして二宮を見た。
二宮はえりかの腕を引っ張って自分の方へ引き寄せた。
え「なに?どうしたの?」
二「オレがこうしたらイヤですか?」
二宮は大野を見ながらえりかをさらに自分の腕に引き寄せた。
え「ちょっと、二宮くん?なに?」
大野は何も言わず二宮からえりかを引き離した。
そして、二宮を店から引っ張り出した。
「おまえ、何してんの?」
「別に…」
「えりかの事、好きなわけ?」
「違う。オレは…」
「なに?」
二宮は思わず大野の腕を取った。
「オレは…大野さんの…」
そう言って大野を見つめる二宮の瞳は潤んでいた。
「えっ?なに?」
大野は少しびっくりして二宮を見つめ返した。
えりかとみわは店の入り口からそれを見ていた。
「ねぇ、なんか様子がおかしくない?えりかさん?」
「………」
「えりか先輩?」
私の嫌な予感は的中したんだろうか…?
えりかは何だか胸がザワザワしていた。
続く