41
『涙と動揺』翔side~
楓は何故だか涙が止まらなくてしばらく俺の胸で泣いていた。
「楓、ごめん、急に変な事言ったから…。」
「翔くんは悪くない。謝らないで。」
楓は涙でぐしゃぐしゃになった顔を手で拭ってから俺を見た。
「翔くん、答え待っててもらっていい?」
「分かった、俺が向こうへ戻るまでに答えを教えて欲しい。」
「うん。」
それから俺たちは公園から出ると少し歩いた。
少しずつ日が暮れて薄暗くなっていた。
「楓、送るよ。」
「ありがとう。でも大丈夫。まだ少し明るいし。」
「でも、ここからはちょっと遠いし。もうすぐ暗くなるから送るよ、送らせて。」
「ふふ、心配性だな…翔くんは。」
「そうかな。」
「そうだよ(笑)」
俺と楓は黙ってただ歩いた。
気持ちを伝えた時、どうして楓が泣いたのか。
考えても分からなかった。
俺は楓をアパートまで送ると、泊まらせて貰ってるカズのアパートに帰った。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
「ただいま、カズ。」
「あ、おかえり。どうだった?」
「えっ?」
「あれ?今日、こっちの会社の人たちと会うんじゃなかった?」
「あ、そうそう。そうだよ。」
俺はカズには楓と会うことは言っていなかった。
今日は、どこに出掛けるの?と聞かれて咄嗟に「会社の同僚と会う」と言ってしまった。
「翔ちゃん?」
「なに?」
「本当は誰と会ってたの?」
カズが俺をじっと見るもんだから動揺してしまった。
「えっ?何言ってるの?会社のやつらだよ。」
「ふーん。」
俺は水を飲もうと冷蔵庫からペットボトルを出すと蓋を開けた。
一口飲んで蓋を閉めようとしたが、上手くできずに蓋を落とした。
転がった蓋を追いかけるとカズがそれを拾った。
「はい。」
「あ、ありがと。」
「夕飯、食べて来なかったの?」
カズが冷蔵庫を開けながら中から野菜やら肉を出した。
「うん。食べなかった。」
「珍しいね。会社の同僚と昼間会うなんてさ。普通夜じゃない?」
「そ、そうかな。そいつ夜はデートだって言うからさ。」
俺は動揺を隠しきれずにペットボトルの水に蓋をしようとしてまた、蓋を落とした。
「あ…」
カズの足元に転がった。
「翔ちゃん?」
「はい?」
俺はたぶん引きつった笑顔だったに違いない。
「何、隠してんの?」
「えっと、あの…」
「翔ちゃん!」
カズが俺を覗き込んだ。
「ごめん。楓と会ってた。」
「やっぱり。で?どうだったの?」
カズには敵わない。
俺の行動はすべてお見通しだった。
カズが野菜を切りながら「教えて、今日のこと。」と言った。
俺は隠さずにすべて話そうと思った。
続く