あれから毎日が淡々と過ぎていき、気付けば3年の月日が流れていた。
「もう、忘れたら?」
「えっ?」
私は会社の上司と飲んでいた。
「もう、3年でしょ?いい加減、俺にしなよ?何年待たせるの?(笑)」
彼は上司と言っても私と大して変わらない年だ。
もうずっと、結婚してくれと言われている。
その度に断っていた。
「私は誰とも結婚する気はないよ。」
「彼のこと?」
「うん...いつか再会出来たらその時は...って。後悔したくないの。」
「でも、もう連絡取ってないんでしょ?二人とも海外行ってるんだし。いつ帰って来るかも分からないのに。」
「ごめん。それでも待ちたいの。」
「そっか、適わないな...(笑)」
潤くんにも、早く忘れろって言われていた。
それでも、待ちたかった。
「ねぇ、結局どっちを待ってるわけ?」潤くんが聞いてくる。
「ふふ、決まってるでしょ?」
「分かんないよ。」
「内緒(笑)」
「ズルイなぁー。本当に。」
季節は夏になった。
私は大きな仕事を任されるまでになっていた。
今日も仕事であちこち駆け回る。
「疲れたぁー・・・」
オフィスに戻り席に着くと思わずそんな言葉が出てきてしまう。
時計を見ると定時を回っていた。
次々と退社して行く社員を尻目に黙々とパソコンを打つ。
何気に大きな窓の外を見ると雨が降っていた。
「あ、雨...」
傘持ってたかな?
デスクの引き出しを開けると折りたたみ傘が見えた。
良かった。
傘がある。
外を見ると少しずつ日が落ちて夕暮れの空になっていた。
もうすぐ暗くなるかな。
早く帰らないとな。
私は仕事を終わらせると帰る支度をしてオフィスを後にした。
ビルのフロアから外に出ると雨はパラパラと降っていた。
持っていた折りたたみ傘を広げると駅に向かって歩き出す。
真っ直ぐ駅に向かって歩いていると向こうからこちらに向かって歩いて来る人が見えた。
真っ直ぐ歩いて来る人は私の前に向かって来る。
ぶつかるかと思って避けようとした時、傘の下から見えたその顔を見てハッとした。
あっ...
私は思わず笑みがこぼれた。
目の前のその人は私が三年間忘れずにいた人。
ずっと手を離してしまった事を後悔していた人だ。
私を見て小さく微笑むと「ただいま」と言ってニコッと笑った。
私はもう後悔はしたくない。
ずっとそう思って来た。
顔を見て涙が零れる。
「泣くか笑うか、どっちかにしてよ(笑)」
「ごめん。やっと会えた。ずっと会いたかった。」
「うん。」
「待ってた。待ってたよ。」
自然と泣き笑いになってしまう自分が可笑しかった。
「ただいま。」
「おかえり。」
私はそう言って微笑んだ。
「こっちに戻って来て真っ直ぐに君のところへ来たんだ。ずっと会いたかった。」
その言葉を聞いてさらに泣き笑いになる自分が可笑しかった。
空を見ると雨は止んでいた。
「ごめん、泣きたくないのに...」
「いいよ。」
彼は傘を畳み片手に持った。
私も傘を畳む。
私の涙を手で軽く拭ってからそっと抱きしめた。
「ただいま。」
「うん。おかえり。おかえり!!」
私たちは、二度と離れることはないと言う気持ちで抱き合った。
そして唇と唇が重なる。
いつの間にか日が落ちて暗くなっていた。
夏の夜風が吹く心地よい空気の中、二人は手を取り合って歩き出した。
未来へと向かって。
終
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ようやく無事に終わりました。
最後に男の方の名前を書いていないのはどちらとハッピーエンドだったかは、読んでいる方の想像にお任せしたいと思いました。
さて、みなさんはどちらとハッピーエンドでしたか?
「いつの間にか...」を最後まで読んでいただきありがとうございましたm(*_ _)m♡