結局、松本も大野もほとんど眠れないまま朝を迎えた。
朝方目が覚めた松本がキッチンでコーヒーを入れていると大野も寝室から起きて来た。
「リーダー、おはよ。」
「おはよ。」
「眠れた?」
「いや、いろいろ考えちゃって...」
「俺も...」
松本は、コーヒーをマグカップ二つに入れて一つを大野に渡した。
「今日、どうする?」と松本が言った時スマホが鳴った。
「あ、誰だろ?」
リビングのテーブルに置いてあるスマホを見ると櫻井からだった。
「翔くんだ。何だろう?」そう言った時に松本はある事に気付いた。
まだ、櫻井には高橋の話しはしていなかった。
―はい。
―潤くん?
―うん。どうしたの?朝早くから?
―ニノ...カズは?そこにいるの?
―えっ?カズ?いないけど?
―そっか...
―ねぇ、翔くん?
―なに?
―まだ、雅紀がどこにいたか、話してなかったよね?
―あぁ、そう言えば...聞いてない...
―だよね、ごめん。うっかりしてた。
―大丈夫だよ。教えてくれる?ってそれもそうだけど、カズは?知ってる?
―いや。そっちにいないの?雅紀と一緒に病院じゃないの?
―そっか。そうかな。だったらいいんだけど...
―何かあった?
―いや...カズと連絡つかないんだ。こんな事って今までないし...なんか、嫌な予感がするんだよ。
―嫌な予感?
―うん。なんかよくわかんねぇけどさ。スマホも電源切ってるみたいだし。
―翔くん?
―ん?
―とりあえずこっちに来れる?話したいこともあるし。俺が行ってもいいんだけど、怪我人もいるし。
―そうだな...とりあえずそっちに向かう。
電話を切ると櫻井は顔を洗って着替えた。
部屋の鍵を掛けて地下駐車場まで行くと車に乗り込んだ。
朝早いので空気はひんやりとしていた。
松本は、電話を切ると二宮に電話を掛けてみた。
櫻井の言っていたように繋がらない。
電源も入ってないみたいだ。
何度か掛けたが結果は同じだった。
「繋がらない?」
大野が不安そうに松本の顔を覗く。
「ダメみたい。繋がらない。」
松本は首を横に振った。
病院だから電源を切ってるのか?
それなら、いいけど。
でも、カズはほとんど電源なんて切らない。
何だろう?
変な違和感がする。
「ねぇ、相葉ちゃん、ちゃんと病院行ったのかな...」
大野が不安そうに松本を見た。
「えっ?もしかしてまた高橋が現れて...とか?!」
「...うん...でも、まさかだよな...」
大野は自分で言っておいてものすごく不安になった。
まさか...まさかだよな。
オイラの思い過ごしならいいけど…
松本も思い出していた。
そう言えば、雅紀のスマホに高橋から電話がかかってきていた。
あれから自分はこっちへ帰って来てしまった。
まさか、俺が帰って来る間にまた電話があって、脅されて...とか...
まさか...違うよな。
松本はものすごく不安になった。
自分がちゃんと雅紀を病院まで行く所を見届けるべきだった。
カズは、大丈夫だろうか。
カズ...アイツ無理しそうだし。
「...俺...ちゃんと見届ければ良かった。カズ...やっぱり何かあったんじゃ...?」
松本は大野の顔を見て泣きそうになった。
「潤くん、まだ何かあったって決まったわけじゃないよ。大丈夫だよ、きっと。カズは大丈夫。きっと大丈夫。」
大野は、自分にも言い聞かせるように言った。
二人で不安になっているとインターフォンが鳴った。
「翔くんかも。」
松本はモニターを見た。
不安そうな顔の櫻井が映っていた。
「翔くん、今開けるから。入ってきて。」
「うん。」
しばらくして部屋のインターフォンが鳴った。
松本は急いで玄関へと行ってドアを開けた。
「翔くん...」
「どうした?」
櫻井は不安そうな松本を見てそう言った。
「いや...とりあえず中へ入って。」
リビングのソファーへ三人が座った。
松本は、櫻井を見て「まずは...今から雅紀がどこにいたかを話すね。」
「うん。分かった。」
櫻井は松本の顔をしっかりと見た。
続く