高橋は考えていた。
相葉を美紀に会わせよう。
そうすれば美紀も目を覚ますかもしれない。
あの日どうしてそうなったのか。
分かるかもしれない。
タクシーは当てもなく走り続けていた。
高橋はタクシーの窓から流れる景色をぼんやりと見ていた。
すっかり暗くなって夜の街が見える。
『ねぇ、高橋くんは好きな子いないの?』
屈託なく聞いてくる美紀は可愛かった。
『何?急に?』
『やっぱりいるの?』
『いないよ。それより美紀は?いるんだろ?』
『さぁ』
美紀はニコッと笑って首を横に傾ける。
放課後の教室。
誰もいない。
あの時好きだって言えば良かった。
美紀の後ろに相葉の姿を追っていたんだ。
美紀の好きなヤツは相葉だと思っていた。
『相葉くんはいるのかな?』
『どうだろう?俺らとは違う世界にいるしな。』
『違くないよ?同じだよ。』
『そうかぁ?だってアイツのいる場所はこっちとは違う。毎日仕事して、ニコニコ笑ってさ。女の子にもキャーって言われる世界だろ?』
『あはは、高橋くん単純。そんないい世界じゃないと思うよ?相葉くんは努力してるんだよ。』
『はぁ?何言ってんの?』
『大変だよ。私たちが呑気にしてる間も大人の人たちと仕事しなくちゃいけないんだから。』
『まぁ、そうだな。大変だよな。』
美紀は相葉の事になると少しムキになって話していたような気がする。
きっと好きなんだと勝手に思っていた。
だから身を引こうと決めて美紀を一人で行かせた。
あの日・・・。
どうして俺も行かなかった?
どうして...!!
高橋は頭を抱えて泣いていた。
やっぱり相葉にも伝えよう。
そして会わせるんだ。
アイツばっかり幸せそうに笑ってるなんて許せない。
高橋はまた怒りの感情が少しずつ沸いてきた。
ズボンのポケットから携帯を取り出すと相葉へと電話をかけた。
呼び出し音がずっと鳴っていた。
続く