二宮は松本が行くのを玄関で見送ってリビングに戻ると何か音がしているのに気付いた。
なんだろ?
相葉のスマホだ。
さっき、着信があって松本はどこへ置いたのか。
音のする方へ耳を傾ける。
少し小さな音で光りながら鳴っているスマホが見えた。
キッチンの机の上にあった。
二宮は恐る恐るスマホの画面を見た。
“高橋”と名前が見えた。
物凄くドキドキしたが二宮は電話に出た。
―はい。
―やっと出たな。
―何の用だ?!
―おまえ、相葉じゃないな?アイツはどうした?
―知らない。
二宮は咄嗟にそう答えた。
―じゃあなんでおまえが相葉の電話にでるんだ?
―さぁ。
―くっ・・・
高橋の言葉にならない声が聞こえてきた。
何か考えているのか沈黙が続いた。
―とにかく相葉を出せよ。
―知らない。
二宮は相変わらずそう答えた。
―俺は相葉に聞きたいことがあるんだ。
―何?
― 一緒に来て欲しい所がある。
―どこ?
―今から教える場所に来て欲しい。相葉に伝えてくれ。必ず来てくれと。
二宮は高橋が言った場所をメモした。
病院...?
何だって言うんだ。
―なんで病院なんか!
―いいから伝えてくれ!来れば分かるんだ。
それだけ言うと電話は切れた。
二宮は眠っている相葉の側に行った。
まーくん。
大丈夫だよ。
俺が代わりに行ってくるからね。
その時、マンションのインターフォンが鳴った。
モニターを見ると男が一人立っていた。
「はい?」
「あ、櫻井くんから言われて。白石と言います。」
あー、そうか、医者が来る事になっていたんだった。
二宮は急いでロックを解除した。
ほどなくして玄関のインターフォンも鳴った。
玄関まで行き白石を部屋へ通した。
「で、衰弱してるって?どこ?」
「あ、こちらです。」
二宮はソファーで眠っている相葉を指さした。
「うん。ちょっと診察するよ?」
白石はソファーに眠っている相葉の毛布をはいで体を触って胸の音を聴いたりしていた。
「あの、、」
「うん。まぁ、少し栄養失調かな。水分も足りてないね。」
不安そうにしている二宮の肩をポンポンと叩いて白石は「じゃあ、連れて行くから。」
「えっ?!」
「ここじゃ十分な手当てが出来ないからね。二宮くんだっけ?手を貸してくれますか?」
二宮はその白石と言う医者をジッと見た。
40代後半くらいか?
佐々木蔵之介?
よく見ると似てる!・・・二宮は思わずニヤっとしてしまった。
「何か?」
白石は訝しげな顔をして二宮を見た。
「いや。何でもないです。」
ちょっと可笑しかったがニヤっとした顔を引き締めると相葉を抱き抱えるのを手伝った。
二宮は部屋を出る時に部屋の鍵を念のため掛けた。
「あの?」
駐車場まで歩きながら白石に問いかけた。
「ん?」
「いや、あの。まーくん・・・相葉さんは?大丈夫なんですよね?」
「んー。」白石は少し深く呼吸をすると「まぁ、点滴して様子を見ていく感じかな。体にあざもあったし。」
「えっ?あざ?」
二宮は相葉を抱えながら立ち止まって白石を見た。
「ちょっと、止まらないで。」
「あ、すいません。でも、あざって?」
「蹴られたか、殴られたか。アバラも折れてるね。」
「そんな・・・」
二宮は泣きそうになるのを堪えた。
やっぱりヤバイやつなのか?!
俺が行っても大丈夫だろうか?
でも、行かないと。
まーくんをこんな目に合わせたヤツ。
許せない。
大野さんだって。
俺のせいかもしれないんだ。
二宮は唇をギュッと噛み締めた。
続く