13『もう一度』
カズは、延期されていたCM撮影に行く支度をしていた。
洗面所で顔を洗って自分の顔を鏡で見た。
酷い顔だな…。
最近、あまりよく眠れていない。
今日の撮影は大丈夫だろうか。
カズは、ユウコの事を想った。
今頃どうしているのだろうか。
あれから会ってはいない。
昨日の夜、相葉から電話があった。
ーニノ?
ーあぁ、どうした?
ー俺、今日さ、雑誌の撮影があってAスタジオに行ったんだ。
ーうん。
ーでさ、ユウコちゃんに会ったよ。
ーえっ?そう…なんだ
ーなんか、ニノの事気にしてたよ。
ーそっか…
ーもう一度会って話したら?
ーうん…
ユウコも悩んでいるんだろうか?
やっぱり、もう一度会って話したい。
ユウコに会いたい。
カズは、支度を終えるとマネージャーが待っているマンションの下まで降りて行った。
今日の撮影がユウコと一緒だとは夢にも思っていなかった。
カズがマンションから出たすぐあとにユウコもまた、マンションから出た。
カズがマネージャーの車に乗ると同時にユウコもマンションの下に出てマネージャーの来るのを待った。
一瞬、ほんの一瞬、ユウコはカズがマネージャーの車に乗って出て行くのを見た気がした。
あぁ、そうか。
今日はカズと行き先が同じだったんだとユウコは思った。
これからカズに会う、そんな事を思うと急にドキドキと緊張してきた。
ほどなくしてマネージャーの車が来るとユウコは車に乗り込んだ。
「ユウコちゃん、大丈夫ですか?」
ルームミラー越しに斎藤が話しかける。
「えっ?」
「何だか疲れてるように見えますよ。」
「うん、大丈夫。ちょっと寝不足なだけだから。」
「だったらいいんですけど…」
斎藤は元気がないユウコを見て心配そうにそう言った。
ユウコは、これからカズに会うんだと言う事で仕事の内容よりその事で頭がいっぱいだった。
続く