11『後悔』
ユウコは、カズがいなくなった部屋でしばらく動けずにいた。
なんであんな事言っちゃったんだろう。
会うのやめよう、なんて。
本当は、もっと違う事を言いたかった。だけど気持ちとはうらはらに偽りの言葉を発していた。
ユウコは悲しくなって泣きそうになる自分を押さえた。
自分で言った事だもん、我慢しなきゃいけない、ユウコはそう思った。
それでも言わなければ良かった、そんな事ばかり考えてしまう。
考え込んでいても、仕方ない。ユウコは、遅めの朝食を作ってキッチンでゆっくりと食べた。
いつもならカズの分と二人分作る。
今日は、一人分の朝食。
空いている席を見つめた。
いつも、カズのいる場所だ。ダイニングテーブルが寂しく広く感じる。
こんなにテーブル広かったっけ…?
泣きそうになる自分を押さえていると携帯が鳴った。
ーもしもし。
ーあ、ユウコちゃん?斎藤です。
マネージャーからだった。
ーどうしたの?
ー今日、延期になりましたよ。
ー今日?
ーもしかして、忘れてました?今日、CM撮影だったんですよ?
ユウコはハッとした。
そうだ、今日だった。CM撮影の事なんて頭からすっかり抜けていた。
ー延期って?
ー嵐さんの番組収録がちょっと延びたみたいで、スケジュールが合わなくなったんですよ。
ーまた、後日なんで今日はなしです。
ー斎藤くん、ありがとう。わかった。
ユウコは、携帯を切ると、フッとため息をついた。
延期になるなんて、何かのイタズラかも…。
今はカズと会いたくない。
いや、会えない。
こんな気持ちでCM撮影なんて一緒に出来ない。
ユウコは、ちょっとホッとした。
いっそ、CMの話も断ってしまおうか。
だけど、社長がせっかく取ってきてくれた仕事だ。
そんな事は、出来ない。
私…どんな顔して会えばいいの?
胸が締め付けられるように痛い、苦しい。
ユウコは、また深くため息をついた。
続く