9『憂鬱』
マネージャーが迎えに来る時間だ。
カズは、上着を着て深く帽子を被った。
マネージャーが下に迎えに来た合図に携帯が一度鳴って切れた。
カズは、下に行きマネージャーの車に乗り込んだ。
「おはようございます。」
「…おはよう、ございます…。」
マネージャーは、カズがいつもと様子が違うと思い声をかけた。
「どうかしましたか?」
「えっ?」
カズが一瞬マネージャーの方を見た。
「寝てないんですか?何か疲れてる感じがしますが…」
「いや…」
「体は大事ですからちゃんと休めて下さいよ。」
マネージャーは、後部座席に座るカズをルームミラー越しに見た。
かなり疲れているように見えた。
カズは、みんなに顔を合わせるのが憂鬱だった。
だけど仕事に穴を空けるわけには行かない。
カズは、楽屋のドアを開けた。
「おはようございます〜」
いつもと、変わりないように挨拶をして中へと入った。
奥にあるソファーへと深く座ると鞄から携帯ゲーム機を出して、ゲームを始めた。
先に楽屋にいた相葉と大野が二宮の異変に気付いて二人で顔を見合わせた。
相葉が二宮に近づいた。
「ニノ…?」
「……」
「ニノ?おはよ。」相葉が顔を覗き込むようにして隣に座った。
「おぅ。」
二宮は下を向いたまま答えた。
「ニノ、帽子取らないの?珍しいね、帽子被ってるの。」
「そうかな…。」
二宮は相変わらずゲームの画面に目を向けたままだ。
「ねっ、今日なんか機嫌悪い?」
「はっ?んなわけないじゃんっ。」
明らかに機嫌の悪い物言いだ。
相葉の聞き方もおかしいが…。
「ごめん。でもさ何かあるなら言って。ねっ?」
相葉はそれだけ言うと二宮から離れた。
大「どうだった?」
相「うん…やっぱ機嫌悪い…」
大「あいつ、顔を見られたくないんだと思う。」
相「ん?どう言う事?顔に出来物できたとか?」
大「あほかっ、んなわけねぇだろ!」
相「冗談だよ!」相葉は軽く笑った。
大「何かあったんだよ…」
相「何か?」
大「最近、あいつ元気ないなって思ってたんだ。たぶん…」
相「たぶん?何?」
大「ちょっと話してくる。」
そう言うと大野は席を立ち二宮の所まで行き隣に座った。
大「ニノ、ちょっといい?」
二「ん?」
二宮は相変わらず顔を上げずに答える。
大野は、二宮の顔を覗き込むと黙って立ち上がった。
大「ゲーム止めて。」
二「何、急に…」
二宮は一瞬大野を見たがまた下を向いてしまった。
仕方なく大野は、二宮の手を取り二宮を立ち上がらせると、二宮が手に持っていたゲーム機をソファーに置いた。
そのまま手を引っ張って楽屋のドアまで歩いた。
不思議そうに見ている相葉に声をかける。
大「相葉ちゃん、ちょっと出るから他のメンバー来たら適当に言っといて。」
相「わかった。」
相葉は何か察したように大野を見た。
二「リーダー痛いよ、何なの?」
大野は黙って二宮を引っ張って楽屋を出た。
続く