久しぶりに君が俺の家に来た。
また、俺のベッドの上に座る。
「ねぇ、カズ?」
「何?」
俺はスマホでゲームをしていた。
視線はずっとスマホの画面を見ていた。
「大野くんと付き合う事になったの。」
また、その話しか。。
「あぁ、聞きましたよ。大野さんから。」
「そっか、聞いてるよね。でもさ。続きがあるの?聞きたい?」
君は俺に聞きたい!と言わせたいんだろう。
俺は意地悪く「聞きたくない。」と答えた。
「もぅ、聞きたいくせに。」
どうしても話したいようだ。
「あのさ、聞きたくないって言ってるんですけど?」
「なんで?とにかく聞いて!!」
「あー、失敗した!くそっ!」
俺はスマホゲームに失敗して思わず叫んだ。
「ちょっとカズ?聞いてよ!」
君は枕を俺に投げつけた。
「痛っ!何なの?!」
俺はいくら君のやった事とはいえイラッとした。
「だから!振られたの!」
君はちょっと涙目になって俺を見た。
「えっ?」
俺は一瞬まぬけな顔をした。。と思う。
「だって、付き合う事になったんでしょ?」
「違うの。一度は付き合うって言ったのにやっぱりダメだって。」
俺はこの前大野さんが言ってたいた事を思い出した。
好きな人がいるから付き合うのはもう一度よく考えるって言ってたな。
「で?なんでダメになったんですか?」
「好きな人がいるって。」
「そう。。」
「ちょっとそれだけ?もっと慰めてくれてもいいでしょ?」
君は完全に泣いていた。
「・・・」
俺は、なんて声を掛けていいのか分からず君の涙を見ていた。
しばらく泣いていたあと君が言ったんだ。
「大野くんの好きな人はね、カズだよ。」
「えっ?はっ?」
俺は驚いておかしな声を出してしまった。
「どう言う事?」俺は君の隣に座った。
「実はずっと気付いてた。大野くんがカズを好きだって。」
「ちょっと待って。男だよ?仮にさ、好きだったとして・・・どうしろと?」
俺はいつになく動揺した。
「男でもあるの。あるんだよ。」君は泣き顔のまま隣に座る俺の肩を両手で掴んで俺を揺すった。
「そんな事言われてもさ・・・」
俺は頭が真っ白になった。
「カズ。他に好きな人いるの?」
君が俺の肩を掴んだまま聞いてきた。
綺麗な目で俺をジッと見るので顔が熱くなった。
「いるよ。好きな人。」
「そっか。いるよね。」
目の前の君が好きだと言えなかった。
「うん。いるよ。」
「大野くんじゃないよね?」
「まさか。違う。でもさ。大野さんの好きな人って間違ってない?俺ではないよね。」
「ううん。間違いじゃないよ。きっと。」
「でもさ・・・」
「見てたらわかる。カズの話ばかりするの。嬉しそうに。」
「そりゃ友達だし話しぐらいしますよね?」
君は俺の肩から手を離してベッドから降りた。
「でもね。違うの。カズの話しをする時はなんかこうキラキラしてるって言うか。」
君は今度はベッドの下に座ってベッドの上に座る俺を下から見ていた。
「キラキラ?(笑)なにそれ?」
「んー、だからキラキラしてるんだよ。」
「ごめん、分かんない(笑)」
俺はちょっと笑った。
君は涙で濡れた頬や目を手で拭いていた。
「そっか、分かんないよね。」
「ごめん。急にさそんな話しされても俺もどうしたらいいか・・・」
「だよね。」
「うん。」
しばらく沈黙が続く中俺は君に言ったんだ。
「俺の好きな人はさ、目の前にいるよ。」
君は一瞬何を言ってるのか分からないと言う顔をして俺をジッと見ていた。
「えっ?」
目をクリっとさせて俺を見る。
「なんて、冗談。そんな事言ったらどうするかな?って。」
「なんだ!びっくりした。」
君はちょっとホッとしたようにクスッと笑った。
俺はなんて気弱なんだ。
やっぱり言えなかった。
君を好きだって。
「やっぱり悔しい。カズがライバルだなんて。」
そう言って君は帰って行った。
俺がライバル?
嘘だろ・・・?
大野さんの好きな人。
俺なわけないよな。
君が帰って行ったあと俺はまたスマホのゲームをしながらずっと考えていた。
そして頭の中がゴチャゴチャしていた。
好きだと言えなかった事。
大野さんの好きな人。
俺が好きな人は君だと言った時の顔を思い出していた。
やっぱり俺に脈はない。
彼女は完全に大野さんが好きだ。
そして俺の想いは完全に片想いだと思い知らさせた日だった。
俺はスマホゲームが終わるとベッドに入った。
今日もゆっくり眠りにつく。