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えりは、思い切って声を掛けてみた。
「あの・・・」
あけみが振り返るとえりがニコッと笑って立っていた。
「あれ?えっと、タケルくんの?」
「はい。妹ってタケルは言ってるみたいだけど違うんです。」
「ん?」
あけみはよく分からなくて首を傾げた。
「私、えりと言います。あの、ちょっと話しませんか?」
「あ、うん。」あけみは戸惑いながらも小さく頷いた。
雑貨屋から少し行った所にコーヒーショップがあるのを思い出してあけみはそこに行こうと言った。
少し歩くと大きな幅の広い階段があってそこを上がった所に飲食店やお店が並ぶ一角になっていた。
二人はそこを歩いていた。
タケルが適当に街を歩いていると遠くに階段を上るえりの姿が見えた。
あれ?
えりだよな?
一緒に歩いているのはあけみだった。
「えりっ!なんであけみさんとっ!?」
タケルは高校時代の事を思い出して「まさかまた!」と叫んで二人のいる場所まで走った。
「えりっ!」
タケルは息を切らせてえりの所へと駆け寄った。
「タケルっ!」
「どうしたの?」
「おまえ、またっ!?」
「えっ?タケル違うよ、違う。」
あけみはキョロキョロと二人を見た。
「タケルくん?どうしたの?」
「あけみさん、こいつと何話してました?」
「えっ?まだ何も・・・」
「タケル。違うよ。私はあけみさんならって。きっと、タケルを幸せにしてくれるって思ったから。」
「本当か、どうか。」タケルはえりを見て言った。
あけみはいつもの顔とは違うタケルを見て少し怖かった。
「タケル。私はあけみさんと話したいと思っただけだよ。」
えりはタケルを恐る恐る見た。
タケルは「もう、帰ろう」そう言ってえりの手を引っ張って歩き出そうとした。
「待って、タケル。あけみさんと話したい。ダメなの?」
「ダメだ。」
タケルはえりの手を引っ張って階段を下りようとしていた。
それを見てあけみは、「タケルくん、待って。三人で話さない?」
「でも、それは出来ない。」
タケルはさらにえりの手を引っ張って行こうとした。
「タケル、離して。痛いっ」
「タケルくん?」あけみがタケルに呼び掛けたがタケルはえりをぐいぐい引っ張って階段を何段か下りて行こうとしていた。
えりが抵抗してタケルから離れようとした時一瞬えりの足元がふらっとなった。
階段を一段踏み外した。
その時、階段の上にいたあけみが咄嗟に駆け下りてえりの手を掴んだ。
その拍子に今度はあけみが階段を踏み外して下まで転がり落ちてしまった。
「痛いっ。」えりは幸い階段下まで落ちずに途中で止まった。
一瞬何が起きたか分からなかったえりは辺りをキョロキョロと見渡した。
見ると下にタケルがあけみを抱き抱えていた。
「あけみさんっ!!」
えりは自分が痛いのも忘れタケルの所まで階段を駆け下りた。
「あけみさん!」
「・・・ごめん・・・何やってんだろ・・・」
あけみの小さな声がかすかにそう言った。
「あけみさん、今、救急車呼んだから!」
タケルは涙声になりながらあけみに話しかけた。
「救急車なんて大げさ(笑)大丈夫だよ。」
「でも、打ち所が悪かったりしたら・・・」
「タケル?血が出てる。タケルも転んだの?」
えりはタケルの手の甲が擦りむけているのを見て驚いた。
「大丈夫、このくらい。」
「タケル・・・?ごめん。私がいけなかった。」
「えり・・・おまえも怪我してる。」
「タケルくん?」
タケルに抱き抱えられたあけみが小さな声でタケルに話しかけた。
「何?」
「私、行かないといけないの。今日、彼に会うことになってて。。」
「あけみさん、ダメだよ。怪我もしてるし。」
「でも・・・今日行かないと・・・ダメになっちゃう・・・」あけみの目から涙が流れていた。
「あけみさん・・・。」
「あけみさん、私がいけなかった。なんでこんな事に。」
しばらくすると救急車が来てあけみを運んで病院へと向かった。
タケルとえりも一緒に救急車に乗り込んだ。