21
私は、潤と暮らしたマンションを出てとりあえずしばらくはホテルに泊まる事にした。
新しいアパートが見つかるまで。
あけみは仕事が終わると不動産屋に足を運んでアパートを探した。
幸い職場から近いアパートが見つかってすぐに入れることになった。
今までとは違って狭いアパートだ。
それでもまぁ新しい方なのかな。
見た目も中も綺麗だった。
一人で暮らすには充分。
あけみはすぐに契約してホテルからの荷物を運んだ。
潤がいない時間にマンションへ行き残りの荷物もまとめてアパートへ運んだ。
大きな家具はすべて置いてきた。
あけみは新しく心機一転始めるつもりだった。
そうだ。
挨拶も回らないとね。
隣の部屋を訪ねたがいなかった。
まぁ、あとでもいいかな。
夜になり、隣に挨拶にもう一度行ってみることにした。
インターホンを鳴らすとすぐに出てきた。
ドアが開いてびっくりした。
「タケルくん!」
「あけみさんっ!!どうしたんですか?」
「あの、隣に引っ越して来たの。」
「えっ?!まさかあけみさん、俺を追いかけて?」
「へっ?」
タケルがちょっと真剣な顔でそう言ったのであけみも少し驚いた。
「なんて、冗談ですよ(笑)あけみさん驚きすぎ(笑)」
「なんだ、びっくりした(笑)」
「だけど、またどうして?」
「あー、別れたの。彼とね。」
あけみはもうあっさりと忘れたと言うふうに明るく言った。
「そうなんですか?!まさか、俺のせいとか?」
「もう、うぬぼれすぎ(笑)違うよ。」
「そっか、そうですよね。」
タケルは何となくあけみが寂しそうに見えた。
「でも隣に越してくるなんて運命感じちゃいますね。」笑顔でそう言うタケルにあけみもニコっと笑った。
「タケルくん、ありがとう。良かった隣がタケルくんで。変な人じゃなくて(笑)」
「はい。俺も嬉しいですよ。」
「うん。じゃあ、また。」そう言ってあけみは部屋に戻ると荷物を整理し始めた。
アパート用に買った小さなタンスに自分の服を入れていると自分の服ではないものが出てきた。
あっ・・・
持って来ちゃった。
あけみはそれを両手で広げた。
潤くんの匂いがする。
一緒に買ったTシャツだった。
これ、気に入ってずっと着てたっけ?
あれ?
なんだろ。
あけみは自分でも気付かないうちに瞳から涙がスーッと流れて落ちた。
気に入ってたし返さなくちゃね。
両方の瞳から涙がポロポロ溢れて落ちた。
潤くん。。
私 何やってんだろ。
間違えて持って来ちゃうなんてね。
何やってんだろ。
バカだな。あけみは。なんてまた潤くんに怒られちゃうね。
涙で前が見えない。
あけみは自分でもどうすることも出来ないくらい涙が溢れて止まらなかった。