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その日、仕事も忙しく書きかけの潤へのメールは結局最後まで打つことは出来なかった。
タケルとも朝喋ったくらいでお互い忙しくその日会話はほとんどなかった。
夕方マンションへと帰るとまだ潤は帰っていなかった。
帰ってないか。
冷蔵庫を開けると朝ラップをかけてしまった朝食がそのままだった。
夕飯はこれでも食べようかな(笑)
何だか二人でいる時よりも部屋がグッと広く感じた。
潤はどこへ行っちゃったのかな。
ソファーでゴロンと横になると急に不安が襲ってきた。
潤・・・
あけみの瞳から涙がスーッと流れた。
私、何やってんだろ。
一番大切な人を傷付けた。
謝らなきゃ。
スマホを開いて書きかけのメールを打とうと思った時メールの着信音と共にメールが来た。
『彼氏さんと仲直りしましたか?』
タケルからだった。
『まだ・・・だけど・・・。』
『そうなんですね。』
『まだ帰って来ないの。昨日出て行ったきり。』
『良かったら気晴らしに一緒にご飯でもどうですか?』
えっ?
どうしよう?
『でも、今日は潤を待ってないと。』
『今日帰って来るか分からないんですよね?』
どうやって断ろうかとメールを打とうとしていると着信音が鳴ってびっくりした。
「もしもし?」
「あけみさん?」
「タケルくん?今からメールの返事するところだったのに。」
「俺の誘い断る気でしょ?」
「えっ?」
「彼氏さん待ってないとダメなんですか?」
「えっと、喧嘩したままだし。」
「でも、たまにはいいんじゃないですか?彼氏さん困らせるのも。」
「でも。。」
「あけみさん。気晴らしもたまにはいいですよ。」
「う~ん。でもな。」
「じゃあ、職場近くのカフェの前で待ってますから。」
「タケルくん?」
電話は切れてしまった。
もう強引だな。
仕方なく支度をして行く準備をした。
ご飯だけならね。いいよね。。
私はマンションを出た。
夜になってもまだ暑い。
今日は蒸し暑かった。
待ち合わせのカフェの前に着くとすでにタケルくんは来ていた。
「ごめんね。待たせちゃった?」
「大丈夫。行こ!」そう言ってタケルはあけみの手を握った。
えっ?タケルくん?
「ちょっと、タケルくん?」
「何かある?」タケルがあけみの方を向いてニコっとした。
「えっと、手・・・」
「まぁいいじゃないですか?ねっ。」
「でも。。」
「何か問題でも?」
「うーん。もぅ、いいよ(笑)」あけみは渋々手を繋ぐのを許した。
「どこ行きます?」
「どこでも。タケルくん誘ってきたんだし。決めていいよ。」
「そう言うと思って決めてきた(笑)」
「そっか、なんだ。じゃあ任せるよ。」
「うん。」タケルは小さく微笑むとあけみの手を引いて歩き出した。
行ってみたいと思っていたパスタ屋の前に着いた。
「あれ?ここ。」
「うん。前にともこさんと話してたの聞こえちゃって。」
「ありがとう。なかなか、行けなかったから。嬉しいよ。」
お店に入るとおしゃれな雰囲気に私はますます嬉しくなった。
店長もともこも《タケルくんに気を付けて》って言ったけど全然大丈夫じゃない。
どこを気を付けたらいいんだろ。
あけみはタケルと過ごす時間が楽しく思えてきた。