18
あかりは、一旦アパートに戻ると荷物を整理した。
少し落ち着いた所で、ベットに横になった。
なんか疲れたな。
翔に電話してみようかな。
翔に会いに帰って来たくせにいざとなると勇気が出ない。
電話を掛けようと発信ボタンを押そうとして押せない。
思えば、翔に好きだと言われた日以来会っていない。
潤は、どうしているだろうか。
あんな風に一方的に別れをしてしまって良かったのだろうか。
あかりは、翔に電話を掛けようともう一度携帯の電話帳を開く。
櫻井 翔
その名前をじっと見た。
翔。
どうしよう。
電話したいのに、出来ないよ。
潤の顔が浮かぶ。
潤、ごめんね。
あかりは、何気なく潤の番号を見つけて発信ボタンを押していた。
呼び出し音が鳴るのを聞くか聞かないかの内に切ってしまった。
ダメ。潤に掛けるなんて。
迷惑になる。
もう、別れたんだから。
あかりは、途方もなくベットに仰向けになった。
自然と涙が頬を伝って落ちる。
瞳をゆっくり閉じた。
その時、握っていた携帯が鳴った。
そっと、瞳を開けて着信を見る。
着信画面を確認すると、潤だった。
あかりは、仰向けになったまま電話に出た。
ーはい。
ーワンギリすんなよ。
ーふふ…鳴っちゃったんだね。
ーうん、鳴った。で、すぐ切れた。
ーそっか。
しばらく沈黙が続く。
ー…ねぇ、私間違ってたかな。
ーん?
ー潤と別れた事、とか…
ーとか?
ーあのね、ゆいこに言われたの。潤の優しさをムダにしちゃダメだって。
ーうん。
ーでも、翔と潤は友達で…だから。
ーあかり?おまえさ、迷うなよ。
ー…だけど、
ー泣くなよ。
ー泣いてない…よ…
潤は、あかりが電話の向こうで泣いているのが分かった。
ー俺は、翔さんだからこそ、あかりを幸せにしてくれるって思ったんだ。他のやつだったら、絶対あかりを渡したりしない。だから。迷うなよ。
ー・・・
ーあいつだから。
ーごめんね、潤
ーなんで謝るんだよ、謝られたら俺が惨めじゃん。
ーごめん。
ーだから、謝るなって。
ーごめんね。
ー謝るなって、いい加減怒るよ
ーごめんね、潤。
ー謝るなよ、最初からおまえの気持ちも、翔くんの気持ちも分かってたんだ。
ー私が、潤と付き合ったりしたから。
ーそんな事言うなよ…俺が辛いじゃん…
潤も、また泣いていた。
ーだけど、潤と一緒にいて楽しかった。幸せだったよ。
ー当たり前だろ、俺はおまえが大好きだったんだから。
ー潤、ありがとう。
ーうん。ちゃんと幸せにしてもらえよ。
ー・・・
あかりは、泣いていた。
ー泣くなよ。もう、抱きしめてやれないんだから。。
ーごめんね。
あかりと潤は、電話の向こうでお互い、泣いていた。
続く