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一方エントランスまで降りて来た二人はちょっと複雑な表情をしていた。
翔はニノに先を越されたのが悔しかった。
ニノもプレゼントが同じ事にちょっと…いやかなり複雑な気持ちだった。
「ニノ、俺 車だから送って行こうか?」
「うん、大丈夫。俺は歩いて帰りたいから。」
「そう?」
「うん。」
「じゃあ、またね。ニノ。」
翔はそう言って手を振ると駐車場まで歩いて行った。
その時、ニノが翔の後ろ姿に声を掛けた。
「翔ちゃん」
「なに?」と翔が振り返ると、「俺が先に大野さんの部屋にいてやっぱり悔しかったでしょ?」と言ってニヤッと笑って軽く手を振ると翔に背中を向けて行ってしまった。
「ニノのヤツ~!!」翔は悔しかった。真っ先に智の部屋に行って一緒にお祝いしたかったのだ。
でも、ニノもちょっと悔しかった。いつの間にか二人はメールのやり取りをしていたし、ネクタイも自分だけが翔ちゃんにあげていると思っていたら智もあげていたし。
ニノは智のマンションの前にある公園の芝生の上を歩くのが好きだった。
この芝生の上をサクサク歩きながらニヤっと笑った。
「でも、今年はZEROがあるから翔ちゃんには12時前に大野さんの家に行くのは無理だったからね。ふふふ…」
やっぱり今回は俺の勝ち。
翔は、マンションの駐車場から車で出ると、マンションの前の公園の芝生を歩くニノを見た。
「なんか、悔しいけど…まっ、ニノだからいいか…。」
翔は口角を上げてフッと笑ってコートのポケットからクラッカーを出した。
本当はこれ使うつもりだったんだけど、無駄になっちゃったな…。
信号待ちで、クラッカーをパンっと鳴らした。
智くん、33歳おめでとう。
ニノは、公園を抜けて静かな並木道を歩いていた。
翔ちゃんの時もちゃんと家まで行ってお祝いしてあげるからね。
翔ちゃんとプレゼントが同じだったなんて、大野さんも可笑しかっただろうな。
自分の時も智と翔が同じプレゼントだった事を思い出して可笑しくて一人で笑った。
フフ…
今日は、大野さんの誕生日。
おめでとう。
いつまでも愛してますよ。
終わり。