12
私が智くんの耳元で頷くと私のお腹がグーっと鳴った。
『お腹空いたの?』智くんが私を抱きしめたまま聞いた。
『うん?ちょっと空いてる(笑)』
私も智くんに抱きついたまま答えた。
考えてみたらお昼から何も口にしていなかった。
『何か食べる?』
『うん。』
智くんは、私から離れるとリビングと繋がっているキッチンの冷蔵庫を開けて何やらゴソゴソしていた。
私も冷蔵庫まで行って一緒に中を覗いた。
『何もないかも。どうしようか?』
『野菜は?』
『うーん、この前もらったトマトがあるかも。』
『もらったの?』
『うん。なんかもらった。潤くんに。んふふ。』
『そうなんだ。じゃあ、ちょっと棚とか見てもいい?』
『いいよ。』
不思議そうにしてる智くんを横目に私は棚の中や引き出しをチェックした。
一通り見終わると『智くんは待ってて。』そう言って、リビングのソファーに智くんを追いやった。
こう見えても料理は得意なんだから。
作ってる間も智くんは手持ち無沙汰なのか覗きに来た。
『何が出来るの?』
『出来たら呼ぶから。料理してるの見られるの恥ずかしいからあっち行っててよー』
『うふふ、恥ずかしいの?』智くんは笑いながら聞いた。
『だって。。』
『見てちゃダメなの?』
『んーもう、ダメ!あっち行ってて!』
私が思わず怖い顔をすると、『わかった。わかった。』と言って智くんは慌ててリビングへと戻って行った。
しばらくして、料理が出来たので智くんをキッチンのカウンターへと呼んだ。
リビングと繋がっているキッチンの流しの前はカウンターテーブルになっていてそこに椅子が並んでいて食事が出来た。
智くんが椅子に座ると私は料理の乗ったお皿をカウンターに出した。
『美味しそー。すごいね。料理人みたいじゃん。』
『あはは、智くん大げさ(笑)』
智くんが嬉しそうに私の料理を見つめてる。
何だかそれだけで幸せだった。
私も智くんの横に座って一緒に食べた。
『うまい!トモちゃん、料理上手いね。』智くんが私に向かって微笑む。
食べ終わると片付けて、一緒にテレビを見た。
『そろそろ、寝よっか?』
『うん。』
何だかドキドキしてきた。一晩過ごすのは初めてだし。
『明日は仕事なんだ。トモちゃんは大丈夫?なんか、泊まってとか言っちゃったけど。仕事だったらごめん。』
『ううん。明日は休みだから。』
本当は、仕事だった。でも智くんを困らせたくなくて嘘を言った。
『なら、よかった。』
『うん。』
寝室に行くと智くんはベッドの横に布団を敷いた。
『俺、ここに寝るからトモちゃんはベッド使っていいよ。』
『へ?』
私は一緒にベッドに入るもんだと思っていたので拍子抜けしてしまった。
『ん?』
『ベッドで一緒に寝てもいいよ。』なんてちょっと言ってみる。
一生懸命、布団を敷いている智くんの耳には届かなかったみたいだ。
『ん?なんか、言った?』
『べ、別に何でもない。。』
『トモちゃん?耳真っ赤だけどどうした?』
『ん?なんでもないよー。』私はベッドに潜り込んだ。もう、智くん鈍感なんだから。
智くんが『おやすみ』と言って電気を消した。
しばらくすると智くんの寝息が聞こえてきた。
本当に寝ちゃった。
やだ私、何を期待してたんだろ(笑)
そう思いながらも疲れていたのかいつの間にか眠ってしまった。