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私は声にならずに両手で口を覆ってそのまま大きなキャンパスの前につっ立っていた。
『トモちゃん?』
智くんの声の方を向くとちょっと心配そうに私を見ていた。
『智くん、これ、私?』
『うん。ずっとさ、描いてあげたくて。って言うか自分が描きたくて、トモちゃんを。』
そう言って優しく微笑んだ。
キャンパスには、綺麗な草原にベンチがあってそこに私が微笑んで座っていて空には大きな虹がかかっていた。
幻想的な素敵な絵だった。
私は涙が溢れてくるのを止めるに必死だった。やだ、涙で絵がちゃんと見えないよ。
『ごめん、なんかいけなかったかな。』
智くんが不安そうに私を見ながら頭を掻いた。
『ううん。嬉しいんだよ。智くん。ごめん・・・嬉しいんだよ・・』
智くんは、笑顔になって『それなら良かった。なんか不安で。』
『不安?』私は手で涙を拭いながら智くんを見た。
改めて智くんをじっと見つめるとやっぱり綺麗な顔をしていた。
『だってさ、喜んでくれなかったら、、とか。すげー不安になりながら描いてた。』
『ううん。嬉しいよ。こんな素敵な絵に私がいるだもん。』
『トモちゃん、これもらってくれる?』
『えっ?でも、いいの?』
『うん。』
『でも、大きいね。うちアパートだからな(笑)』
『じゃあ、ここに置いておくからたまには見に来てよ。』
『えっ?』
『いや?ここに来るの?』
『嫌じゃないよ、そんなことない!』
『じゃあさ、ここにたまには来てよ。』
私は彼の言葉に返事をせずにしばらく絵を眺めていた。
今日で最後にするつもりで来たんだ、そう思い出して私は『智くん。ごめんね。』そう切り出した。