私はこの人が好き。
どんな仕草にもキュンとする。
ふふ
リビングのテーブルに頬杖を付きながら彼を見ていて思わずニヤとしてしまった。
「何?」彼がこっちを見て不思議そうな顔をする。
「べ、別に…」私が真っ赤になって横を向くと彼は「ふふ」と言ってふにゃと笑った。
あー、ダメだ。
この笑顔に弱い。
「さっきからどうしたの?」彼がさらに不思議そうに私を見た。
「智くん?」
「ん?」
「別に…」
私の彼は大野智。
あの、アイドルの…なんか嘘みたいだな。
と、言うか元々智くんには興味もなかった、私。(ごめん、智。)
でも、出会ってからどんどん彼に惹かれて行った。
「ねぇ、飲む?」
智くんが私にペットボトルの水を差し出した。
「えっ?」
「さっきから見てるから飲みたいのかと思って…違うの?」
「えっと…」私が戸惑っていると彼はまたペットボトルの蓋を開けて飲みだした。
ゴクゴクと飲んでいる喉仏が動く。
私は思わずその喉仏をパクっと噛んだ…
衝動的に。
「わっ!」彼が驚いてペットボトルを持ったままカーペットの上に転がった。
「あっ」智くんの持っていたペットボトルから水がこぼれる。
「ごめん、智くん。」
怒るかと思ったら彼はカーペットに転がったままふにゃと笑った。
「こっちおいで」と手を広げる。寝転んだまま。
私は言われるままに智くんの胸に収まった。
「ねぇ、水、零れてるよ」
「いいよ、こうしてたい。」
彼は私をギュッと抱きしめた。
私は、体を半分起こして「噛んでいい?」とそう言って智くんの喉仏をもう一度噛んだ。
「だから痛いって。」
「だって…」そう言って私が一瞬困った顔をすると智くんは私の唇を軽く噛んでおでこにチュッとした。
「ごちそうさま。」彼はニコッと笑った。
そして、起き上がるとキッチンから雑巾を持って来てカーペットを拭いた。
「私がやるよ。」そう言って彼から雑巾を取るとカーペットをゴシゴシと拭いた。
あー、カーペットだから拭いてもダメだー。
私が必死で拭いていると彼が後ろからギュッと抱きついてきた。
私が振り返ると目の前に智くんの顔があった。
ドキッとする。
そのまま唇が重なった。
思えば彼とこんなふうになるとは思ってなかった。
元々、会ったときも興味が湧かなかった。
飲み会に来た彼を紹介してくれたのは潤くんだ。
潤くんとは同級生でたまに飲んだりする友達。
『今度、オレの友達連れて来ていい?』潤くんがそう言って本当に次の飲み会に彼を連れて来た。
『えっと、知ってるよね?(笑)テレビで見るだろ?』潤くんは私を見て笑って言った。
『えっ?あー、えーと、大野くんだっけ?』
『そう。知ってるよね、そりゃ。』
『まぁ。嵐のメンバーくらい知ってるし。』
私が彼を見るとふにゃっとした顔で笑った。
潤くんと彼と友達数人で乾杯して飲み始めた。
でも、全然 喋べんないし、ただ飲んでるだけの彼。
『潤くん、彼は無口なの?』思わず聞いてしまった。
『えっ?あぁ、そんなに喋らないかもな。』
『ふーん。』私は彼をジッと見つめた。
『えっ?何かついてる?』彼がこっちを見て不思議な顔をした。
『あ、いや・・・しゃべらないし、つまんないのかなって。』
『そんな事ない。こういう場は苦手で。』
『そっか。』
また、黙ってしまった。
私は智くんの隣にいる友達とばかり喋っていた。
智くんは、私の隣にいる潤くんと向かい合わせで座っていて時々、その潤くんと喋っていた。
そろそろ、酔いが回ってきたという頃に潤くんに腕をつつかれた。
『痛い、何?』
『ちょっとは彼と喋ってあげてよ。』
『えっ?あぁ、大野くんと?』
『うん。せっかく連れて来たんだしさ。』
『でも、、』私は潤くんの顔を見た。
『何?』
『何話せばいいか・・・。』
『あ~そうか、まだ言ってなかったな。』
『何?』
『大野さん、絵描くんだよ。』
『本当?!』私は目がキラキラしてしまった。
私の趣味も絵を描くことだ。
続き