最近、俺が帰って行くと彼女がDVDを観ている。
「ただいま。また観てたの?」
彼女はDVDに夢中なのか、俺が帰って来たのに気付かない。
「ただいま!!」
「あっ、ごめん。おかえり。」
彼女がびっくりして振り向いた。
「また、DVD観てたの?」
「うん。この翔ちゃんすごく好きなの。」
彼女は、俺のソロを観ていた。
「ふ~ん。恥ずかしいからもう止めてくれる?」
俺は自分が歌って踊るのを見るのがちょっと恥ずかしかった。
彼女は、DVDを止めると「もう寝るね。」と寝室へと行ってしまった。
俺はシャワーを浴びて髪を乾かすと彼女の眠っているベッドへと体を滑り込ませた。
静かに眠る彼女の頬に涙が伝っているのに気付いた。
えっ?
泣いてた…?
俺は彼女の頬をそっと撫でて寄り添うように眠りについた。
次の日も彼女は、同じDVDを観ていた。
そして、なんとなく泣いていたように見えた。
「ねぇ、もう観るのやめたら?」
「うん。そうだね…」
「最近ずっと観てるけどなんで?」
「ふふ、言われてみたら毎日観てるよね。」
また、次の日も彼女は、観ていた。
「また、観てる、、」
「あっ、翔ちゃんおかえり。」
そう言う彼女は何故か泣いていた。
「どうした?」俺はびっくりして彼女の側に座った。
「あのね、翔ちゃん。翔ちゃん誰を想ってこの歌 歌ってるの?」
彼女が潤んだ瞳で聞いてきた。
「おまえ、何言ってんの?!それで泣いてたの?」
「ごめん…」彼女は下を向いて涙を拭っていた。
「バカだな。いつもおまえしか想ってないよ。」
「でも、こんな切ない表情で…なんだか私まで切なくなっちゃって。」
「何言ってんだよ。本当にバカだな。」
俺は彼女を抱きしめた。
ベッドで激しく彼女を抱きながら、俺は、ごめんと彼女に謝っていた。
本当は、想ってた。
昔、別れた彼女を。
嫌いになったわけじゃないのに、お互いの事情で別れた人を想って歌っていた。
でも、これは彼女には内緒だ。
ずっと、心の中に秘めておこう。
俺の胸の中で激しく揺れる彼女に俺は謝っていた。
ごめん。
でも、今はちゃんと君を愛してるから。
今度はちゃんと、君を想って歌うよ。
俺の腕枕にいる彼女に「愛してるよ」そうつぶやいた。
彼女は、「翔ちゃん、私もだよ。」そう言って俺を見た。
一瞬でも他の人を想ってごめん。
心の中でそう言いながら君をギュッと抱きしめた。