送れないメール
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機種変更

年末にデートをした。

『機種変更したんだよ』

彼がちょっと見せびらかすように携帯を見せた。

ずっと、シュールな文具の宇宙人ぽいキャラクターのストラップをお揃いでつけていた。

そのストラップ部分が切れて、お揃いじゃなくなっていた。
翌日、ヤマダ電機の携帯電話売り場から電話した。

『機種、何だっけ』

彼と同じ機種に機種変更した。

同じ携帯電話で繋がってると思うだけでうれしかった。

実際、この年は1000以上メールしあっていた。

会って触れて、電話で声を聞いて、メールで心を伝えていたように思えていた。

クリスマス

やっと精神安定剤を減らし体調は良くなって来たけど、会えない日は寂しがり切なくて泣いてばかりいる状態が続いていた。

会える日が決まると、会えるまでは気分が高揚し会っている間は満ち足りた気分でいられるのに、一緒の時間が終わりに近づくと地獄に突き落とされたように、寂しくなり、泣きながら帰ることもあった。

年末も近づいた日『仕事、金沢で終わるから終わったら迎えに行くよ』と連絡があった。

いつものように小躍りするほど、うれしかった。

ホテルで2人っきりになった時、いつものように飛びつくように抱きついたら、ポケットから小さな水色の包みを出して『クリスマスプレゼントだよ。開けてみて』

プレゼントだなんて思いもよらなかったし、だいいちクリスマスだなんてことも頭の中に描いちゃいけないと思っていたから余計、びっくりして驚き涙が込み上げて来た。

パッケージを開けたら首に腕を回しながら『本当は革紐のタイプが似合うと思ったけど、無くてこれにしちゃった』とティファニーのシルバーのアニバーサリーペンダントを着けてくれた。

その夜の彼からのメール
『17年12月23日
寂しい時は今日のペンダントを握って寝るんだよ。そこに僕の気持ちがあるから』

それからは、精神安定剤にまた頼った時も、切ない時も、彼の告別式も、ティファニーはいつも一緒だった。

魚津

デパートで待ち合わせをして、彼は『地階の本屋さんにガイドブック買ってくるから待ってて』と言い残して地階に行った。

1階フロアで待っていたら、化粧品カウンターのお姉さんから新製品の紹介で声をかけられた。

これから24時間一緒だしメイク直して貰おうと軽い気持ちでカウンターに座っていたら携帯がなって怒ったような声が飛んで来た。

『じっと待っててって言ったでしょ。せっかくの一緒の時間なのに何でどうでもいいようなことに引っかかってタイムロスするわけ!?』

気持ちがすごくうれしかった。

もう、秋の日がくれかかっていた。

車で1時間とちょっとの富山市内のビジネスホテルにチェックインしてから、ふたりでぶらぶらと天ぷら屋さんまで、日の落ちた街を歩いた。

中外製薬の同僚が接待に使っていて、美味しいお店だから連れて来たと話してくれた。

裏通りのカウンターだけの天ぷら屋で日本酒と美味しい天ぷらで時間を過ごした。

翌日、魚津の水族館に行った。
天気が良く、人がまばらな水族館をのんびり手を繋いで歩いた。
ひとつひとつが、一緒に眺めることで新鮮だった。

お互いに『内田康夫』の浅見光彦シリーズが好きなことが魚津が舞台になっている小説を持っていることで判り、小説談義に盛り上がった。共通のことが、ひとつでも見つかるとうれしかった。

近くの『道の駅』でお土産物を冷やかしながら一緒に眺めた。

ランチは隠れ家のようなイタリアンカフェでパスタを食べた。

金沢に戻る高速道路で、ずっと窓を眺めてた。

『何見てるの、ずっと外見て』

『幸せな景色を忘れないように』

ドアミラーに流れる景色をずっと金沢に着くまで、脳裏に刻み込むように眺めていた。

もう、こんな日が二度とないことを感じていたのかと思うぐらい焼き付けるのに一生懸命だった。
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