※この作品は実在の人名が登場

 しますがあくまでも個人の妄想

 で、完全フィクションです❕

 またBL(ボーイズラブ)要素を含み

 ますのでご理解頂ける方のみ

 お読み下さい❕❕🙏❌

 ご理解頂けない方、

 BLの意味が判らない方はこの

 ままお戻り下さい🙇💦💦

また、こちらに初めていらした方は最初にこの

ページをお読み頂き、納得されたうえで『自己

責任』で読み進めてください🙅 



”菊池風磨”と名乗った青年は穏やかな、いわ
ゆる好青年で。
とてもガラの悪い輩の怒りを買う様なタイプ
には見えなかった。
三郎は彼の服の埃を払ってやってから
「とんだ災難だったな。」
と肩をすくめ、笑顔でおどけてみせる。
「えっと、菊池くん……だよな。行きたい場所
  があるなら、この後、俺が案内しよう。珈琲
  も御馳走になるんだし。1人より、多少は安
  心して行けるだろう!?」
「多少だなんてっ!!とても助かります。でも
  ……ご迷惑じゃないんですか??」
「まぁ、乗り掛かった船、というか、この後
  の予定もないし、菊池くんがまた危険な目に
  あうのを心配して別れるよりよっぽどイイ。」
三郎が人好きのする優しい微笑みを向けると
「本当にありがとうございます、武蔵さん。
  あ、あの、僕の事は”風磨”って呼んでくださ
  い。」
彼からの突然の提案に三郎は目を丸くする。
初対面の青年を呼び捨てに出来るほど三郎も
フレンドリーな性格ではなく。
「そ、っか……じゃあ俺の事も下の名前で呼ん
  でくれ。えっと、風磨、くん。」
「はい、三郎さん。」
名前で呼ぶと、風磨があまりに嬉しそうに微
笑むのが妙に照れ臭い。
三郎としは大した事はしていないつもりでい
たが、この“風磨”という青年に、いたく気に
入られてしまったらしい。

休職以来、妻とも義務的な会話のみ、主治医
以外とはロクに会話する事さえなかった三郎
だったが。
久々に、ただの”武蔵三郎”として”第三者と会
話する”機会に新鮮な感覚を抱いた。
取り留めのない会話をしながら、三郎の行き
つけの喫茶店に到着する。

「ここの珈琲、結構気に入ってるんだ。」
そう言いながら店の扉を開ける三郎。
カランコロン、と耳障り良いベルが軽快に鳴
る。
「!!」
そこで瞬時に表情の固まった三郎が足を止め
た。
平日、この時間帯なら殆ど客のいないはずの
その喫茶店。
今日に限って珍しく賑わっている。
それだけても今の三郎には過多なストレスに
しかならず。
しかも、店の奥には見覚えのあり過ぎる、三
郎に苦々しい記憶を蘇らせる、制服姿の若い
男が3人ほど腰掛けていて。
「嘘だろ……。」
三郎は小さく呟いていた。
体が硬直する。
頭が真っ白になる。
口がカラカラに渇く。
嫌な汗が全身から吹き出す。
ドアノブを握る手に無意識に力が入り、震え
始める。
「三郎さん、どうかしましたか??」
気遣わしげに風磨が三郎の様子を伺う。
「あ、い、いや……。」
何でもない、と、言いたいのに言葉が喉に貼
り付いて上手く紡げない。
「………。」
そんな三郎の様子を冷静に観察していた風磨
「三郎さん。このお店、テイクアウトも可能
  なんですか!?」
突然そんな事を尋ねてきた。
「え、あ、あぁ、大丈夫なはずだ。」
「そうですか……三郎さんは何、飲みます??」
「え、あ、カフェオレ……。」
風磨の質問に咄嗟に何時も頼んでいるものを
反射的に答える三郎。
「分かりました。」
コクリと頷いた風磨はズイッと店内に入り、
よく通る声で
「あの、スミマセン。コーヒーとカフェオレ、
  ホットで1つずつ、テイクアウト、出来ます
  か。」
手際よく店員に注文する。
そのままドアノブに貼り付いていた三郎の手
を柔らかく少し外し
「三郎さん、今日は気候も穏やかですし、せ
  っかくですから外で飲みませんか??」
そう言って三郎の手を取ったまま外に出る。
「え、あ、あの……。」
言い淀む三郎に、
「うわぁ、三郎さん。手、冷たいですね。大
  丈夫ですか??」
そう言うと風磨は両手で三郎の手を包み、ハ
アッと息を吐きかけた。
「今日は結構暖かかったから僕も手袋は持って
  いなくて……。」
そう言って三郎の手を温める様に擦り始める。
風磨の想定外の行動に、三郎は思考が追い付か
ず、しばしそのままにされていた。
が、かなり恥ずかしい事をされている現実に
「あ、だ、大丈夫だからっ!!」
我に返った三郎は、慌てて手を引っ込めた。
それでもニコニコ微笑んでいる風磨と。
気まずさから仄かに頬を染め視線を彷徨わせる
三郎。
微妙な空気で沈黙する中、改めてドアのベルが
軽快な音をたて
「大変お待たせ致しました。カップはお熱いの
  で気を付けてお持ちください。」
と、店員が茶色い紙袋を風磨に手渡した。

「三郎さん、この近くに何処か座れる所ってあ
  りますか??」
まるで何事もなかったかの様に尋ねてくる風磨
「あ、あぁ、そう言えば……。」
と、反射的に三郎はとある場所を告げていた。
そこはここからそう遠くない、小さい児童公園。
まだ下校時刻には早いらしく、誰もいないそこ。
「公園……ですか。誰もいない公園って、何か新
  鮮ですね。」
「あぁ、よくここに……。」
娘と遊びに来ていた、と言いかけて三郎はハッ
と口を噤んだ。
懐かしくて、家族を思うと愛おしさが込み上げ
るのに、どうしてこうなってしまったのか。
苦々しい思いでキュッと唇を噛み締める三郎に
風磨は敢えて気付かない態で
「何処に座りましょうか、三郎さん。」
と半ば強引に三郎の手を引いた。
そうして風磨が提案した先には……
「……いや……大の大人の男2人がブランコ、は
  ないだろう……。」
怪訝な表情を隠す事なく、明らかに拒否る意
思を示す三郎に
「え~っ、誰もいないし、イイじゃないです
  か。こどもが来たら譲ればいいんだし。僕、
  ブランコ、好きなんですよ。」
風磨はまた強引に手を引いて、ブランコに三
郎を腰掛けさせる。
今だ複雑な表情のままの三郎に
「はい、カフェオレです。」
ニコニコと紙コップを手渡し、隣のブランコ
に腰かける風磨。
「……どうも……。」
今だ承諾していない三郎は、それでも紙コップ
を受け取ると、ブランコに腰を落ち着けた。
「僕、結構複雑な境遇で、こどもの頃って、
  ブランコなんて無邪気に乗って遊べる環境に
  なかったんですよね。で、ある程度環境が落
  ち着いた頃には僕は”兄貴”になっていたから。
  妹相手に乗りたいって駄々こねるのも恥ずか
  しくって。もっぱら妹の背中、押すばっかり
  だったんです。」
風磨がキィキィと控えめにブランコを漕ぎな
がらそんな想い出話を明かしてくれる。
「風磨くん、妹がいるのか。」
「妹だけじゃなく、僕、兄妹多いんですよ、
  4人兄妹で。親父だけだったけど、幸せでし
  た。」
「!?わ、悪かった、立ち入った事を聞いて。」
重い境遇を軽々しく聞いてしまった事に慌て
る三郎に対し
「ハハハッ、大丈夫です。別に隠す様な事じ
  ゃないですし。それに……三郎さんには聞い
  て欲しかったので……。」
ポツリと呟く風磨の表情は、三郎からは見る
事が出来ない。
「いやぁ、ブランコ、ホント、めっちゃ久し
  ぶり。超~楽しい。」
こどもの様にはしゃいで、結構な勢いでブラ
ンコを漕ぐ風磨に
「見た目より随分こどもっぽいんだな。」
と三郎は苦笑した。
「たまには童心に返るのもイイですよ。純粋
   に本来あるべき己の姿に向き合う事が出来
  ますから。」
そう言いながらブランコの速度を徐々に落と
していく風磨。
「そんなもの、なのか、な……。」
「そんなものです。歳を重ねると無駄に余計
  な事ばかり考えてしまいますから。恥、とか、
  外聞、とか、周囲の目、とか、他人のエゴ、
  とか……。」
それまで楽しそうに笑っていたはずの風磨の
声が急に冷めたものになる。

完全にブランコが止まったところで風磨が改
めて三郎に向き直り
「……三郎さん……さっき、喫茶店で手、震え
  ていましたよね!?理由を聞いてイイですか??」
「!!」
真っ直ぐに見つめられて三郎が驚愕の表情を
見せる。
「あ、無理にとは言いません。ただ……気にな
  ってしまって。その……何か……あるんですか!?
  ……例えば……その手の火傷跡との関係、とか
  ……。」
風磨に指摘され、三郎は反射的に手の火傷跡を
反対の手で擦っていた。
悔やんでも悔やみきれない。
自分の人生において、あまりにも重い十字架を
背負う事となった、あの出来事。
けれど、下手に隠した所で万一検索でもされた
ら簡単に暴かれてしまう“現実”。
三郎は観念した様に大きく深呼吸すると、可能
な限り冷静に、慎重に言葉を選んで告白する。
「これは……俺の浅はかな行動と、傲慢な正義
  感が引き起こした……悔やんでも悔やみきれな
  い出来事の“代償”とでも言うべき……なのかな。
  その出来事以降、人混みとか喧騒……あとは
  “特定の人間”が駄目なんだ……リハビリはして
  るんだけどな……情けない話、だろう!?」
自嘲する三郎に
「その悔恨の中に……僕の親父の死も含まれて
  いますか……。」
「えっ??」
「いえ、何でもありません。そんな大切な話
  を初対面の僕なんかに聞かせてくださって、
  ありがとうございます。何か無理矢理聞き出
  したみたいになって申し訳ありません。」
頭を下げて謝罪する風磨に
「いや、せめて自分の出来る範囲では誠実な
  対応をしたい、そう考えてるだけだ。」
三郎はバツが悪そうに苦笑してみせた。

それから2人は当たり障りない、他愛ない会話
を交わすなかで。
互いの考え方や言葉の選び方に近しいものを感
じ、互いに好ましい感情を抱きつつ、穏やかな
一時を過ごした。

「そう言えば風磨くんは何処か行く所があった
  んじゃないのか??」
「あっ、そうでした。三郎さんとの会話が楽し
  くて、つい時間を忘れていました。」
「ハハッ、風磨くんは口が上手いんだな。」
「いぇ、本当ですって!!……三郎さんの事を知れ
  て、話が出来て、良かった……。」
風磨は意味深な視線を三郎に寄越し、フワリ、
と大人びた微笑みをみせる。
何故かその表情に三郎の胸がドキン、と鳴った。
「あれ!?三郎さん、顔が赤いですよ!?何かあり
  ましたか!?」
そんな三郎の反応を面白そうに揶揄う風磨に、
「あ~、ゴホン、ゲホン。むやみに大人を揶揄
  うもんじゃない!!」
わざとらしい咳払いの後、三郎は大人の威厳で
たしなめ
「それより風磨くんは何処に行くつもりだった
  んだ!?」
話を本題に戻した。
「あぁ、三郎さんが知っていれば大変助かるん
  ですが……界星堂病院、って……場所、分かりま
  すか??」
「!!」
その聞き覚えのあり過ぎる名前に、今度こそ三
郎の体がビクリと跳ねる。
「三郎さん??」
「えっ、あ、いや……その……そう、妻の勤務先
  で少し驚いた。」
動揺を隠して笑顔で返す三郎に
「そうなんですか、それは本当に偶然ですね。
  でも三郎さん……病院の名前だけでそこまで
  動揺するなんて……奥さんの事、相当愛してい
  らっしゃるんですね。(笑)」
完全に揶揄い口調で、悪戯っぽくニヤける風磨
「だから、大人を揶揄うモンじゃないって言っ
  てんだろ。」
すっかり素になった三郎が、乱暴な口調で風磨
の腕にボスッと肩でツッコミを入れる。
「ハハハ、三郎さん、真っ赤。」
「うるせぇ。まったく、変な奴に関わっちまっ
  た。」
楽しそうにはしゃぐ風磨に、三郎はやれやれと
ボヤいてみせた。

【~続~】
※あと一回で終わります。それとは別口に『新空港』の感
想と『嵐メンバー×次男ちゃんの溺愛ネタ』もご用意中💕